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「このドアホー!!!」

「光が怒った!わい何もしてへんでっ!?」

「何寝坊してんねん!テニス部入るて金ちゃんが言ったんやろ、何呑気に腹出して寝てはるん!?てか腹冷えるからちゃんと明日から布団被るんやで!」

…あれ、どうして怒ってたんやったっけ。まぁええわっ部活遅れてまう!いやもう遅れや!今金ちゃん家におる。電話でテニス部入るから朝練行きたいてはりきってたから迎えに行ったのにこのごんだくれが寝坊したせいで俺までとばっちり食らった。金ちゃんのドアホ。学生鞄とテニスラケットやらなんやら入ったスポーツバッグを持たせると手を引き玄関を勢いよく飛び出した。後ろで金ちゃん家のおばさんが声かけてくれたけど答えてる暇ない。良かったのは金ちゃん家から四天宝寺中が近かったことや。走れば早いで!
金ちゃんとは小学一緒やってん家も近かったんやけど、金ちゃんは俺が小学卒業するときに引っ越した。まぁ時々ふと俺の家に遊びに来るし電話もよう掛けてくるから今でも仲はええんや。

「遅れてすんません!」

学校に着くと案の定もう部活始まっとって大注目された。いややー、こういうの苦手や。入学式での代表挨拶も死にかけたんにやめてや。

「財前珍しいやんか。どないしたん」

「部長ちわす。ごんだくれが寝坊しやがったんすわ」

くるりと金ちゃんの方を振り返ると金ちゃんは…いなかった。えええええっ何!?なんでおらんの金ちゃん!!!?慌てて周りを見渡すと金ちゃんはコートの近くで跳ねてた。いつの間そこまで行ってたん自分。

「テニスや!わいもしたい!わいも仲間に入れてやっ!」

「金ちゃんんん!!!!」

「痛ぁっ!?」

思わず足元に落ちてたボールを金ちゃんの頭に叩きつける。もう金ちゃん止めるのに手段なんか選んでられへん。金ちゃん暴走したら止まらんのやから。俺は痛みで踞ってる金ちゃんの腕を引き立たせる。

「アホっ!制服でテニスやれる訳ないやろ。ジャージに着替えんで」

「痛いー…光の鬼ぃー」

金ちゃんめっちゃ痛そうや。やり過ぎたやろか。

「誰が鬼やねん…着替えたら好きにしてええで」

「ほんまかっ!?なら早よう着替えるっ!光行っくでぇ!!」

途端に笑顔になる金ちゃんにため息を吐きながら一応部長に一礼して部室へ向かった。部室へ向かう途中やたらソワソワする金ちゃんが可笑しくて少し笑った。ていうかこういうの懐かしいなぁ。金ちゃんとは小学の時によう手を繋いでた。金ちゃんよく迷子になりよったからなぁ。懐かしい気持ちのまま部室の扉を開く。中に入ると先客がおった。何ややたら背の高い人やなぁ、なんて思いながら金ちゃんを部室内に誘導する。金ちゃんは部室に入るときょろきょろと物珍しそうに周りを見渡した。うん、そうしたくなるんは分かるわぁ。四天宝寺の部室、外は和風なんに中は洋風ぽいんや。

ふと先程の長身の人を見るとぱちりと目が合った。ていうか、なんや見たことあるよう…な…あれ、この人…?数秒二人で見つめ合って、長身の人はふと声を漏らした。

「ひかる君?」

「…千里さん?」

ちょ、マジっすか、何でおるん。千里さんもそう思ってるみたいで目を丸くしとる。嗚呼そうか、なんや一目でわからんて思ったら茶髪が黒髪になってるんやな。そっちのが似合ってるやん。

「お久しぶりっすわ、千里さん」

多分、約一年ぶりの再開やった。




2010.4.17

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