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入学式も無事終わり(代表挨拶面倒やった…)、何となく部室に顔を出した。まぁ今日部活ないから誰もおらんやろうけど。ロッカーの掃除でもしようて思って部室を開けるとスポーツバッグが一つ部室内にあるベンチに置いてあった。今日部活休みなんにわざわざ来とる人おるん?疑問に思ってコートへ向かってみる。微かにボール打つ音するから人はおるんやろな。

「―――…あ、」

コートに着くとコート内に数えきれないくらいの転がっているボールと、その中心に立つ人影。よく見知ったその人物に思わず声が漏れた。…部長?なんで。いつも涼しい顔してテニスコートに立つ部長の姿とはかけ離れた汗だくな姿の白石部長がおった。流れる汗を拭うこともせずひたすらボールを打っていく部長に釘付けになる。ふいにカラン、とラケットが落ちると部長はその場に崩れるように座り込んだ。

「っ部長!!?」

思わず駆け寄ると部長は驚いたように目を見開いた。まぁいきなり俺が来たら驚くやろな、そう思いながら部長の隣に座りハンカチで汗を拭ってやった。

「財前、何でおるん。今日部活休みやで」

あ、今日オサムちゃんおらんから部活休みやねん。入学式て部員集めするんに大事やないん?まぁええけど。

「俺は入学式の在校代表すわ。てか部長こそ何でおるん」

そう聞くと部長はにっと不敵に笑って練習、て言った。練習て…。部長そのままでも強いんに何でや。

「俺は、聖書やで?練習せな鈍ってまうやろ」

「…でも」

「天才やもんな、」

部長はふいに俺の額をとん、と指先でつついた。天才って何がやねん。部長は俺をじっと見てた。俺のこと?俺は天才ちゃうで。前世から練習してたからや…て、俺も練習ばっかしてたんやった。人のこと言われへん。でも、すんなりテニス出来たちゅうことは多分テニスの才能あったんちゃうかな。自分で言うなって感じやけど。でもそんなん部長もやろ?なのに何でそない苦しそうな顔しとるん。

「財前も、謙也もユウジも小春も小早川も銀も。今度九州から来るていう九州二翼の一人も。みんなテニスの才能あるんや」

嗚呼せやな。ふと金ちゃんを思い出した。先輩らが百年に一人ちゅう確率での天才やったら金ちゃんは千年に一人の天才やねん。最初俺の方が上手かったんに、教えるうちに金ちゃん俺を追い越すんやないかってくらいに上手くなっていって、時々嫉妬した覚えがある。部長も、そんな感じ何やろうか。

「俺は凡人やからな、人一倍努力せなアカンねん。せやからこの事秘密にしとってな、こんな姿は部員には見せたない」

「…わかりました。でも、無茶だけはせんといて下さいね。部長あってこそなんやから」

さっきみたいに座り込んでまうくらい無茶されたらいつか部長壊れてまう気がした。そんなんなったら困る。頷く部長を見てから小さく笑みを浮かべた。部長はそんな俺を見て一瞬固まったかと思うとぐしゃぐしゃに俺を撫で回す。痛いっすわぁ。

「アカンなぁ、どうも財前の前では格好つかん」

「別に格好つかんでええんちゃいます?弱った部長可愛ええし」

「可愛ええって…それは財前やろ」

「俺可愛いくなんかないっすよ」

どちらかと言えば無愛想やし。つり目やからめっちゃ目付き悪いし。可愛ないて言うたのに部長は可愛ええ可愛ええて頭撫でてきよる。なんやねん、子供扱いせんとってや。まぁそんなこと思ってても頭撫でられるん嫌いやないから動かんけど。暫く部長とじゃれよったらHR終わったんか新入生が校門付近に出てきた。

「あ、金ちゃん迎えに行かな」

「金ちゃん?」

「一つ下の幼なじみっすわ。多分テニス部入るんで可愛いがってやって下さい」

立ち上がりズボンの砂ぼこりを落とすと校門へ駆け出した。帰ったら金ちゃんとテニスしよ。部長には負けられへん。




2010.4.16
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話 が 進 ま な い (^q^(←
でも白石君のこのお話は入れたかったのでそれは満足。




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