38 全国大会も終わり(四天宝寺はベスト4やった)冬が過ぎ春がきた。まぁ普通の一年やったと信じたい、うん。そんで昨日は入学式あるちゅう訳で準備して家に帰って即行寝た。てか何で入学式参加せなあかんねん、休ませろや。まぁ在校生代表とかいうのに選ばれたらしいからしゃーないんやけど。朝も何時も通りはよう起きて準備したときやった。家のチャイムが数回鳴った。ピンポンダッシュてあったやろ、あんな感じや。オカンが返事して玄関に行ったかと思えば、直ぐに戻ってきた。 「光ちゃん、金太郎君来てるわよ〜」 思わず飲んでた牛乳噴いてもた。何できてんねん!…あ、せや。金ちゃん今年から中学に入学やんな。てか何処に入ったんやろ。溢れた牛乳を拭いてたら玄関から金ちゃんの大声が聞こえてきた。 「ひーかーるー!早よう行かな遅れてまうでー!」 「五月蝿いわっ!今行くから待っとき」 金ちゃん遅刻魔のくせに何言いよるん。小学生の時とかようフラフラ遊びに言って学校遅れてきてたやん。毎回も変なオヤジにお菓子貰っても着いてったらあかんて教えた覚えあるわ。まぁええか。 「光っひかるー!早く来てやぁー!!」 何ややたらと叫びよるから鞄持って玄関行くと藍華がおった。嗚呼、金ちゃん藍華が苦手て前に言いよったからなぁ。お疲れさん。てか藍華休みなんやろ、ええなぁ。何で俺学校行かなあかんのやろ。 「あっ光君!金ちゃん四天宝寺に入学するんやってね!テニス部入ってくれるのかなぁ?」 …は?えええええ!!?金ちゃん四天宝寺入るんかっ!よく入試受かったなっ。金ちゃんを見ると金ちゃんは嬉しそうに俺に抱きついてくる。金ちゃんの頭を撫でながらそう思った。 「入るんちゃう?」 金ちゃんを撫でながら素っ気なく言うと一瞬藍華の目が鋭くなった気がした。それの瞳を見てゾクリとした。それを、俺は知っている。だがそんな瞳をしたのは一瞬で、直ぐにいつもの藍華に戻る。 「そっか!そうならいいなぁ」 藍華はにこりと笑うと俺の腕に手を絡ませてきた。やめろや、気分悪くなる。やんわりと藍華の腕を外し床に置いていた鞄を持つ。 「ほな金ちゃん行こか」 「おん!よっしゃー!待っとれよ四天宝寺ー!」 「金ちゃんはしゃぎ過ぎると転けてまうで」 笑いながら家を出る。金ちゃんは中学に入るのが楽しみなのかそこら辺をぴょんぴょん跳ねていた。それを微笑ましく見ているとふいに左耳に痛みが走った。そしてカシャンと何かが落ちる音がした。 「痛…っ、?」 耳に触れると少しだけ鮮血が指につく。地面には取れたピアス。おかしいなぁ、ちゃんと付けた筈なんやけど。不思議に思いながらピアスを拾いあげるとピアスは真っ二つに割れていた。 「…何やこれ」 鋭利な刃物で裂かれたようなに割れたピアスに悪寒が走る。気持ち悪い。暫く呆然のそれを見ていたが金ちゃんが俺を呼ぶ声がした。気のせい、やよな。俺はピアスを制服のポケットに突っ込むと金ちゃんを追いかけた。…そんな俺の姿を後ろから藍華は見ていた。 『光君は皆を奪ってまうんやね…あかんで、皆は藍華のものなんに』 狂気を孕んだ瞳が、俺を見ていたと気がつけなかった。 2010.4.14 |