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「あ、の…白石、話あるんやけど今ええ?」

部活が終わり皆着替えている時、謙也さんが俺の腕を掴んできて見ると謙也さん部長を見ていた。嗚呼今言うんやな、て思ってたら部長の所へ一緒に引っ張られて行った。ちょっなんでやねん!俺も行かなあかんのかい。謙也さんの手は緊張の為か汗をかいていてハッキリ言ってキモいて思ったけど振りほどいたりはせんかった。謙也さんヘタレやんな。しゃーないすわぁ。

「何やねん」

部長の声は低くて冷たくて、俺に言われてる訳じゃないのにびくりとした。こんな声部活の時とか、いやそれ以外でも聞いたこてないから驚いた。やって部長がこない分かりやすく態度に出すなんて珍しい。残ってた小春先輩は何かを感じたのか一氏先輩を引っ張って部室から出ていった。小春先輩の観察力半端ないわぁ。

「白石………………………すまんかった!!!!!」

「は?」

謙也さんは唇をぎゅっと引き結んだかと思うといきなり土下座する勢いで頭を下げた。部長はめっちゃぽかん、て顔しとる。まぁ当たり前の反応やな。いきなり謝るんやもん。

「俺っ!俺、は…白石が羨ましかったんや!」

部長は目を見開いて謙也さんを見る。

「白石は何でも出来るから俺、比べられるんが嫌やったんや。それに白石は俺の欲しいものを全てもっとったから、嫉妬した。でも、あの時…俺どうかしとった。やないとあんなこと、言うはずない」

謙也さんは俯いたまま震えとって、俺は思わず手を握り返した。唇を噛み締めてばっと顔を上げる謙也さんの目は潤んどって、また泣くんやろかて思った。まぁ泣かへんかったけど。

「俺は、白石を友達やって思ってる。嫌いなんて嘘やねん!信じてや」

部長は暫く謙也さんを見つめたあと、目を閉じて深いため息をついた。

「…アホちゃうん」

ぼそりと部長が呟いて目を開いた途端バキッて凄まじい音がして謙也さんの手が俺から離れた。いや剥がれたって感じや。視界からも謙也さんの姿が消えて驚く。え、あれ?謙也さんどこ行ったん。それにバキッて何!!?パニックになって思わず謙也さんを探すと謙也さんは床に倒れてた。頬には真っ赤な痕があり、部長はなんや身構えてる…?なんやこれ、何が起こったんや。いやわかってる、分かってるんやけど整理させてや。…謙也さんが部長に謝って、部長が何やキレとって、そんで部長が…謙也さんを殴ったんや。

「えええええ!!!?」

思わず部室の端に逃げる。現実逃避や、現実逃避。やって温和な部長が人を殴ったんやで。聖書とか言われる完璧な人がやで!?

「ほんまにアホやな謙也。そんなん俺かて同じやねん。完璧?せやなぁ、俺はそうかもしれん。でもそのお陰で今までめっちゃ仲がええって奴出来たことないんやで。それに比べて謙也は仰山友達おるし、明るいから周りに人集まるやん。俺はそれが羨ましい思ってたちゅうねん。俺も同じやで、自分ばっかり悪いみたいに言うなや!!!」

「しっ白石…?」

「それに何そない昔のことネチネチ言ってんねん!やからヘタレなんや!俺が怒ってたんはそんなことやない。…謙也が、謙也が俺から距離を取ろうとするから、やから…!」

部長の声が段々と小さくなっていき、顔が赤くなっていく。部長が赤面…!?珍しいんやけど。

「今まで、謙也以上に、仲良うなった奴なんかおらへんから…どうしたらええか分からんかったんや…!」

謙也さんはそれを聞いて再びボロボロ泣き出した。そして勢いよく立ち上がるとぎゅうっと部長に抱きついた。

「ええの?俺まだ友達でおって、ええの?」

「当たり前やん。何言うとるん」

「うわあ゛ぁあああん!!じらいしー!!」

「ちょっ謙也、鼻水付けたら許さへんで!」

何やこれ、暑苦しい。部長に抱きついてわんわん泣く謙也さんをげんなりと見つめる。てか朝もう泣かん!とかなんとか言いよったやんか。早速泣いてるんやけど。ふいに部長と目が合ってにこりと笑われた。

「財前、迷惑かけて堪忍なぁ」

「ほんまっすわぁ」

まだぐずっている謙也さんを放置して部長は俺に近づく。俺は床に座ってため息をついた。やって何か疲れたんやからしゃーないやん。

「…おおきに」

部長は俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でて今まで見たことないくらい綺麗に笑った。ちょっと照れる。でも俺何もしてへんで。

…ところで、この二人の関係の何に俺が関わってたんやろ。不思議や。





2010.4.13
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蔵謙?謙蔵?なんかそんな感じですね…orz 実は今回で光君一年生編は終わりです。次から色々スッ飛ばして二年生編になります^^ だって早く金ちゃんと千歳を出したi((

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