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朝練終わって着替えてたら俺と謙也さんがオサムちゃんから呼ばれた。何やねん謙也さんならまだしも俺まだ何もないわぁ。部活も失敗とかしてへんし。渋々オサムちゃんのとこに行くと何故かニコニコしとった。

「オサムちゃん無駄にニコニコしてキモいっすわぁ」

「えぇっ!?いきなり何でやねん」

なんや俺がボケみたいになってもた。ちゃうでー俺はツッコミや!…やなくて、何の用で呼んだんやろ。謙也さんも変な顔しとるし。

「何か用があるんやなかったん?」

「せや。忍足と財前、お前らダブルス組んでみぃ」

きっとオモロイでー!て言って笑うオサムちゃんを思わず凝視する。

「「ダブルス!!!?」」

ダブルスってあれやんな、二人でするやつ。俺ダブルスしたことないんやけど。いつもシングルスやったし。なんやそれめっちゃ不安なんやけど。謙也さんを見ると目が合った。謙也さんも俺と同じ気持ちみたいで複雑やって顔しとる。

「固定ダブルスは、小春先輩と一氏先輩のダブルスコンビだけでええんちゃう」

あ、四天宝寺は功績とかオサムちゃんの気分とかでオーダー変わったりするんや。オサムちゃんは何時もはダラッとしとるんやけどテニスの才能とか見抜くんはピカ一やねん。選手の体調とか精神冗談見抜いてたりするからほんまに凄い人なんやろうなぁ。

「なんや財前、忍足じゃ不満言うんかー。やったら白石でもええで」

適当やなぁ。何て思ったら謙也さんの肩がびくっとした。どないしたん、そう思って謙也さんを見た瞬間ぐっと腕を掴まれた。強く掴まれ痛みが走る。ちょっ左手握んなや!利き腕やねんで!

「やるで!ダブルスくらい余裕やっちゅーねん!」

「は!?謙也さん何言うてんの!」

普通に考えてダブルス無理やろ。多分謙也さんもダブルスしたことないと思う。練習試合でもシングルスで試合してるとこしか見たことないし。ていうかぶっちゃけて言うと俺ダブルスしたないねん。他人に気を使うとか面倒やし。自分のテニスに集中したいやろ?そう反論したろう思ったけど謙也さん見た瞬間反論の言葉なんて飛んでしもた。謙也さんは眉を潜めて唇噛み締めて何かに耐えるみたいな、悔しそうな表情しとった。

「…謙也さん?」

名前を呼ぶと謙也さんはハッとして何時もの表情に戻った。

「忍足ならそう言うて思ってたでぇ〜!なら決定やな!」

ケラケラ笑ってオサムちゃんが言った瞬間バンッて大きな音がした。音のした方を見ると部室から出てきた部長が居って、辺りが静寂に包まれる。見たら謙也さんと部長が何や睨み合っとった。変な空気が流れて、居心地が悪い。オサムちゃんもそう思ったらしく謙也さんに挨拶して去っていった。人でなしぃいい!!!俺も連れてけやっ!!!俺は謙也さんに腕を掴まれてて逃げられへんのやぞ。ていうか、なんやこの二人前より仲悪くなってへん?前はもっと仲良かったやん。普通の友達、みたいな。何で睨み合っとるん。

「け、んやさん…」

腕を掴んでいる謙也さんの手を外そうとしたら再びその手を掴まれ引き寄せられる。その行為に部長の眉がぴくりと動いたのがわかった。え、なんやこの展開。

「堪忍、白石。今回ばかりは譲られへんちゅー話や」

「それはこっちの台詞やで謙也。…財前離しや」

え、ええ?ちょっ俺が関わってる感じっすか。やめてや!俺を巻き込まんでくれ。巻き込むんやったらせめて説明くらい欲しいんやけど!?謙也さんと部長の顔を見比べていたらいきなり謙也さんが俺を引っ張り駆け出した。何で謙也さん逃げとるの?とか色々聞きたいことがあったんやけど、あまりに謙也さんが必死やったから声をかけれなかった。

謙也さんに引かれながら二人の関係が俺のせいで壊れてしまったのなら嫌やなぁて思った。





2010.4.11
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白石vs謙也編です。二人は幼なじみ!(ネタバレ←)幼なじみだから仲がいいんだけど、お互いにコンプレックスとかもあるよ、みたいな^^ 二人が争ってる場面が書きたかったんです。

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