32 …やから先輩に会いたくなかったんや。先程部室で先輩らに捕まってもて、一緒に弁当食べることになった。日吉達と食べるて言うたら景吾さんが氷帝と四天宝寺集めて食べるて言うたらしい。てか景吾さんが弁当食べるん想像出来へん。(絶対普通ちゃうやろ)渋々着いてったら日吉と鳳も居った。何や顔が疲れとって、多分景吾さんに無理矢理連れて来られたんやな、て分かった。俺は日吉の隣に座ると肩を軽く叩いた。 「…お疲れさん」 「…お前もな」 「お互い大変な先輩持ってしもたなぁ」 色んな意味でな。そう言ってため息を吐き笑いあった。ええなぁ氷帝の雰囲気。高校になったら氷帝に入り直してええやろか。…いや、景吾さんおるから止めとこう。四天宝寺も氷帝も危険なのは変わりないな、うん。てか俺普通に氷帝生の中に混ざってるけどええんやろか。周りを見渡すと近くに四天宝寺生はおらんかった。青の中に緑が一つぽつーん、とおる状態や。 「なぁ日吉。何で俺氷帝一年の中に一人混ざってるんやろ」 「え?ああ…。それ俺も思った」 「別にええんやけどな。多分四天宝寺んとこ行ったら斉田先輩が居る思うし」 今藍華には会いたくないねん。久しぶりに楽しいテニス出来てテンション上がっとるんや、藍華と関わったら下がってまう。疲れるの嫌やねんな。 「斉田先輩…?嗚呼さっき言ってたマネジのことか」 「せやでー。会いたくないねん、しかも兄貴の嫁さんの妹やて言うて今一緒に住んでるんやで。家で会うのも嫌なのに今も会うとか拷問ちゃう?」 「本気で嫌いなんだな、あのマネジの先輩のこと」 「おん」 最後に残して置いた卵焼きを口に放り込むと弁当を片付けた。ちらりと先輩らの方を見るとやはりというか藍華が混ざって弁当食べてて此方まで話し声が聞こえてきそうやった。あ、部長機嫌悪そうやなぁ。笑顔引き吊っとるで。藍華気づいてへんのやろか、てか多分周り全員気づいてへんやろなぁ。ぼーっと部長見よったら視線に気がついたのか部長が此方を向いた。 「アカン、バレてもた」 部長は俺を見てにこりと笑うと隣の謙也さんに何か言って立ち上がった。藍華も何か言ってる。多分どこいくのー?とか聞いてるんやないかな。ああぁアカン、藍華の思考回路読めてまう自分残念やな。 部長は先程の機嫌の悪さは何処へいったのやら上機嫌で俺の所へやって来た。 「財前、助かったで」 「別に助けた覚えないっすわぁ」 「まぁええやん。財前がこっち見とったおかげで逃げる理由が出来てん。おおきにな」 「はぁ…」 部長は俺の隣に座って野菜ジュース飲んどる。何で野菜ジュースやねん、もっと上手いもん飲めや、苺みるくとか。健康ヲタクめっ!健康ばっかり気にしとるから薬品の匂いがするんや。いや薬品やなくて保健室やろか?…どうでもええわ。 「そう言えば、財前は何で俺見てたん?」 はぁ?いや何でそんなん気になるん。別に意味はないんやけど、説明面倒やなぁ。 「部長見てた訳やないっすわぁ」 「へぇ、じゃあ誰見てたん?藍華か?…それはちゃうな。謙也とか?」 何で謙也さん?疑問に思って部長を見ると部長は何やめっちゃ真剣な顔してた。そんな真剣なんテニスの試合以外で見たことなくて驚く。 「…部長?」 ぐっと腕を包帯巻いた手で握られて、普段の部長とちゃう気がして少しだけ怖いて思った。 2010.4.7 ________________ 何故か部長フラグが立ちました(笑) |