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三台のバスからぞろぞろと氷帝のテニス部員が下りてくる。氷帝は人数多いから選抜やったみたいやな。確か、部員は二百人近くおるって景吾さんに聞いた。よく考えたら二百人も連れてこれんよな、アホや俺。

「仰山来たなぁ、あの人数やとコート足りんちゅーねん」

「アレでも人数減らしたらしいで。ほんまは二百人いるらしい。そんだけの人数まとめるなんて跡部って流石部長やんなぁ、俺は無理や」

「白石かて部長やろ!しかも四天宝寺完璧にまとめてて何言うてんねんっ!」

「せやなぁ」

部長と謙也さんの会話を聞きながらバスから下りてくる人達を見る。景吾さんって一番に降りてきそうなイメージやねんけどちゃうねんな。ちゃんと皆降ろしてから自分も降りるんか。部長やんなぁ。あ、景吾さん降りてきた。………て何やアレ。真っ赤な、花の固まり。花束やんな、しかも薔薇や。何でそないなもん持ってきとるんあの人。

ボーっとしてたらいつの間にか後ろに来ていたらしい藍華が俺の服を引っ張り景吾さんを指差す。

「なぁなぁ、あの人が部長なん?」

「そうっすけど、何で」

コイツ景吾さんにも手ぇ出したいんか?内心ため息を吐きつつ返事をする。あかんまじ藍華のこういうミーハーなの苦手や。

「書類をね、届けなきゃなんよぉ。やからあの人が部長かなぁって」

「…ふーん」

「あっ!氷帝の部長さんこっちに来るよ!光君っ!」

少し顔を赤らめて藍華は景吾さんをガン見しとった。俺もつられて藍華の見ている方を見ると景吾さんは此方に向かってきていた。いやいやいや普通、最初は部長のとこに行くやろ。何でこっちに来るんや。藍華に引っ付かれたままゆっくり部長達のところへ移動してみたが景吾さんが来る方が早かった。

「おい雌豚、俺の光から離れろ」

「えっ?」
「はぁ?」

景吾さんは不機嫌そうな顔して藍華を俺から引き剥がして押した。藍華は小さく悲鳴をあげて地面に尻餅をつく。周りの藍華信者たちが藍華を呼ぶ声が響いて正直五月蝿いて思った。けど、今はそんなことどうでもええわ。

「実際会うのは一年ぶりくらいか?あーん」

「そうっすね。そのくらいやと思います。てか“俺の”て何やねん!景吾さんのモノになった覚えてないっすわぁ」

「くく…お前が照れているのはわかっている」

「何やこの人、何にもわかってへんやんか」

しかもどさくさ紛れに花束渡されてもたんやけど。両手でかかえてもはみ出すくらいでっかい薔薇の花束、どないして家に持って帰れっちゅうねん。

「あとほらよ、L'HEURE BLEUEだ」

めっちゃ欲しかったL'HEURE BLEUE目の前にしとる言うんに薔薇のせいで包装の端しか見えへん。この薔薇投げ捨ててええやろか。

「おおきにー。香水は嬉しいけど薔薇はいらんで」

「俺の気持ちだ。素直に受け取ってろ」

「何やねん、素直て。俺素直にいらん言うたやん!あと気持ちもいらん!!」

「お前のような奴をツンデレと言うんだろう?あーん」

「ちょ、何この人の無駄なポジティブさ!!!」

あまりのウザさに薔薇を投げ捨てて逃走する。そしたら景吾さんが指鳴らして何か言ったと同時に、体格いい人(あの人名前、多分樺地やったと思う)が追ってきた。ちょっ!あの人速っ!!足めっちゃ速いんやけど!!!?

その後白石部長が止めてくれるまでリアル鬼ごっこは続いた。練習試合終わる頃俺ちゃんと生きとるやろか。





2010.4.4
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なん…だと…!?跡部がただのアホになってるじゃないか← ていうか跡部の口調があーん?くらいしかわかりません。これは酷い^^;

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