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『あなたとはもう遊べない』

どんなに仲の良かった友達でも最後には皆離れていった。私と仲良くなった子達は皆傷だらけで、泣きそうに笑っていた。その理由は知っていた。でも大切すぎてそれを言う覚悟が私にはなかった。私を見て笑う彼女の瞳には何も写ってはいない、それが寂しくて悲しいのに。

『お姉ちゃんは一人ぼっちだから藍華が一緒にいてあげるね』

彼女は私が一人になると必ず嬉しそうに笑うから、私は言えずにいたんだ。彼女が間違いを起こすのを、怒ることも止めさせることも出来なかった。臆病者だった。そしてそれをこの世界に生まれ落ちて今の俺になったときに後悔した。次は絶対に後悔をしないように、悔いのないようにしようと思った。もう前のように後悔はしたないんや。

授業が始まる前に人が居なくなる場所は俺の知る限りでは一つ。校舎裏の倉庫周辺や。昼は日当たりも悪くて薄暗いし影になってて見えずらい。夕方の放課後になるといい感じに日が射し込んで絶好の告白場所になるんやけど、それ以外はようイジメやリンチに使われとることも知っとる。もし小春先輩がそこにいたらどないしよう。悪いイメージばかりが頭に浮かんでは消える。急ぐせいで途中水溜まりらしきものを踏んでズボンが濡れてしまったがそんなもの気にしていられない。
校舎裏に着くと倉庫の端に固まるようにして集まる人影が見えた。その中に見知った人物がいるのもわかった。

「小春先輩っ!!!」

そう叫ぶと集まった人達が振り返るのがわかった。三年のなんやガラが悪い奴等や。しかもテニス部の先輩。よう問題起こしてるような人らがなんでこうして動いとるん。小春先輩に何の恨みがあるねん!

「光君来たらあかん!!!」

小春先輩が俺のために言うてくれてるちゅうのは分かるけど、無理っすわぁ。

「何や?一年かい、坊やはお家に帰った方がええで〜」

「此処は遊び場じゃないんよー?」

耳障りな声で喋んなや。キモいねん。遊び場やないやて?そんなん分かってるわ。その言葉そっくりそのまま返したる。

「俺、猿の言葉理解出来んねん。早く小春先輩を離してや」

俺にしては低い声が出たなぁ。自分でも驚いてもた。

「ってめぇ!!!」

「調子乗んなやチビ!!!」

なんや猿共の怒り買ってしもたみたいや。後悔してへんけどな。今は小春先輩助けるのが一番や。…ていうか6対1ってめっちゃヤバない?でも言い出した手前逃げるちゅうんも恰好悪いわ。しゃーない、やりまっか。俺が覚悟を決めて拳を握ったときやった。

「光君屈んでや!!!」

猿共の後ろから声がして思わず反射的にしゃがみ込むと頭の上を足が通過した。…ぇ?ちょっ、何やねん!見ると猿共の中の二人くらいが吹っ飛ばされとって驚いた。

「うちには何しても構わへん。でも光君に手ぇ出したんはあかんなぁ?…歯ぁ食い縛れや!!!!」

二人が吹っ飛んだんは小春先輩が蹴り飛ばしたからやったらしい。小春先輩、めっちゃ強っ!ていうかキレたら男前やんな。惚れるっすわ。小春先輩が三年を蹴散らしとるの見よったらいつの間にか俺も火付いとって参戦してた。まぁ相手から仕掛けてきたんやからしゃーないやろ。それに俺、前世でちょっとやんちゃしてた時があったから喧嘩には慣れとるんやで。八人で乱闘しよったら騒ぎに気がついてのか教師が何人か来て俺ら全員生徒指導室に連行された。…俺と小春先輩は悪くないちゅうねん。まぁ途中テンション上げすぎたけど。

この喧嘩で小春先輩は一週間謹慎、俺も同じく一週間謹慎と全国大会出場したらあかんて言われた。まぁ俺一年やから出場できんでも大丈夫やけどな、多分。小春先輩が大会出場禁止にならんでよかった。あとは何故か三年の先輩らに気に入られた。話してみるとちょっと不良な普通の先輩やった。前世でもっとガラ悪い奴等を見慣れてたからかもしれんけど。

なんにせよ小春先輩無事で良かった。キレた先輩が恰好よかったてのは秘密や。指導室でもう何時もの小春先輩に戻ってたけどなぁ。少し残念?






2010.4.2
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何だこれは…!コハ光ですか(違いますよ^^) いや男前になった小春が書きたかっただけです← てかシリアスは何処にいったんだ…。
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