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病院は苦手や。なんかよう分からんような薬の匂いするやろ、あれが苦手やねん。あと何か幽霊とかそういうのが出てきそうでなんか、な。…べっ別に幽霊怖い訳やない!嘘やないでっ!

「ほんま命に別状なくて良かったわぁ!」

熊本に着いて急いで病院に駆け込んだ俺たちを待っていたのはニコニコ笑っとるばぁちゃんやった…。元気やんか!!

「なんか迷惑かけたみたいやなぁ、堪忍な」

命に別状てか、階段から落ちて足の骨折っただけやった。そんときに頭打ったかなんかで気ぃ失ったから祖父が倒れたー!て騒いだんやて。…年取っとるはずなんに階段から転げ落ちて足折っただけってどういうことやねん。どんだけ元気なばぁちゃんや。

「明君もひぃちゃんも大きなって。二人に会えたから足折って良かったかも思ってもたわぁ」

ばぁちゃんはそう言ってころころ笑う。てかひぃちゃん呼ぶな!!ひぃちゃんてのは俺のことや。“光”やから“ひぃ”らしい。普通に光て呼んでや…。

「こちらのお嬢さんは?」

ばぁちゃんが藍華を見ると藍華も人の良さそうな笑顔を見せる。俺は作り笑いてわかるけど普通は分からんやろなってくらいの笑顔。いやほんまに何処でそんな技術身に付けてきたんやコイツ。

「鈴音さんの妹さんなの!鈴音さんが家に引っ越してくる時に一人になるからどうせならって一緒に暮らしてるのよ」

「藍華です!」

「まぁ〜そうなんやなぁ。私はてっきりひぃちゃんが彼女ば連れてきたんかと」

ばぁちゃんんんん!!!!無理!無理や!何で前世の妹を彼女にせなあかんねん!蕁麻疹が出てまうわ!!!

「………………………何か飲み物買ってくる」

俺は堪らず病室と出た。後ろでオカンが照れてるのよ〜とか意味不明なこと言いよったが記憶から抹消することにする。あの場に居ったら確実に死んでまう。少しでもその場所から離れるように早足で廊下を歩く。

「…面倒くさい」

そう言った瞬間、どんっと何かにぶつかり尻餅をついた。いや尻餅をついたというより撥ね飛ばされたに近い。撥ね飛ばされる前に言葉を呟いたせいで舌を噛んでしまい口内に血の味が広がった。壁か何かにぶつかったんやろか、と顔を上げるとやたらとデカイ青年?が立ってた。

「すまんばい、立てっと」

青年?は倒れた俺を見て慌てて手を差しのべてくる。舌が痛くて言葉が出ず、こくこく頷いてその手を取った。ぐい、と力強く引かれ立ち上がる。青年?を目の前にして身長差がかなりあるのに驚いた。俺165センチなんやけど、それより30センチくらい上や。

「今右目見えてなかと、俺の不注意たい」

青年?を見上げると右目に包帯を巻いていた。怪我でもしたんやろか。見えてなかったんやったら俺の不注意でもあるわ。俺も前を見てなかったし。首を横に振ると青年?はへらりと笑った。

「口、血が付いとるばってんどげんしたとね」

青年?は俺の顎を持ち上げて覗き込むように見てくる。…ってこの体制危ない気ぃすんやけど。ちらりと周りを見るとやっぱりというか通る人達が見てくる。

「口開けてみんしゃい、多分切れとっと」

うん、この人めっちゃ危ない気ぃする…!天然タラシ系?危な過ぎるわ!!!取りあえず俺は青年?の手を取ってその場から離れることにした。やって、あの体制キスする寸前みたいやねんから!!!誤解を招いてまう。




2010.3.26



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