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適当に授業聞いて意味もなく携帯を弄ってみたりして時間は過ぎ、今は昼休み。少し話した隣の席の鈴木と机を並べて弁当を食べとった。いつもと変わらない昼休み…になる筈やった。

「あの、財前君」

少し縮こまりながら話しかけてきた女子…安藤さんに視線を向けると安藤さんは二、三度瞬きすると教室の外を指差した。ん?何やねん。視線を安藤さんからそちらへ向け直すと何故か爽やかな笑みを浮かべた白石部長が手を振っとった。

「えぇー…」

何でおるん、部長。学年いっこ上やんか。そして綺麗に包帯が巻かれた左手には何かよう分からん紙が握られとる。部長は俺が動こうとしないのに気付いたのか部長直々に此方へ来た。いや、なんでそない簡単に他の教室(しかも一学年下)に入れるん?

「財前、お前まだ入部届出してないらしいやないか」

あー、そういえば出しとらんかったような気ぃするわ。ていうか入部届を貰ってすらない。

「テニス部入らんの?」

いつもと変わらん笑顔の筈なんに何か棘みたいなん感じるんは俺だけやろか。ちらりと鈴木を見ると勢いよく目を反らされてしまった。関わりたくないってか。

「まだ決めてないっすわ」

「ふーん、じゃあ改めて言うわ。財前テニス部に入部な」

入部な、て!強制なんかい!

「よし!財前今すぐ此れに名前を書くんや!」

左手に握られてたのは、入部届やった。それを俺の目の前に突きつけてみせる。何この人めっちゃ怖い…!!整った顔してはるから余計に怖い。

「い、嫌って言ったらどないします?」

部長の威圧に軽く後込みしながら決死の覚悟で反論してみる。今、全世界の人間に誉められる資格もろた気がした…。

「…強制入部や!!」

「はっ!?ちょ、待っ!!?」

白石部長は俺の左手を掴むと俺にペンを持たせ入部届の名前欄に“財前光”と書き出した。いやいやいやマジで強制入部なんかい!抵抗してみるも顔に似合わず物凄い力で押さえつけてきて結局名前を全部書かされてしまった。入部届にはかなり汚い文字で財前光と書いてある。

「エクスタシー!!」

エクスタシー!!やないわ。部長は凄いうっとりした顔して入部届見とる。

「あああぁ…まじ最悪っすわ。部長何してくれはるん…」

強制で入部届書かされるとか、まじ何なんや。思わず右手に持ってた苺みるく潰してまいかけたわぁ。

「んー、このままやったら財前書くて言いながら逃げてまいそうやったからなぁ。それに俺が財前気に入っとるちゅうこともある」

白石部長は先程とは打って変わって優しい表情をしてぐしゃぐしゃに俺の頭をかき混ぜる。何か最近頭撫でられること多くなったわ、なんでやろ。

「はぁ。まあしゃーないすね」

しゃーないから入部したります、そう言えば白石部長は満足気に微笑んだ。

「よっしゃ!これでテニス部戦力アップや!!」

おいぃぃぃ!!!実はそっちが本音やろ!!!?



2010.3.25

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