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家から少し離れたでっかい公園にテニスコートがある。小さいコートなんやけど、人があんま来んからよう金ちゃんと試合しとった。そういえば初めて金ちゃんに会ったのもこのコートやったなぁ。壁打ちしよった俺に話しかけてきたんや。弟できたみたいで可愛かった。懐かしいなぁ。

コートに着くと金ちゃんは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねよった、可愛ええ。藍華は近くにあるベンチに座ると此方を監視するかの如く見てくる。嗚呼、やっぱ連れて来んどけば良かったわぁ。本気出されへんしやりづらい。

「光!本気でいくで!」

「金ちゃん勘弁してや、疲れとるんやから」

辺りはもう暗くてコートの周りにある外灯だけが頼りや。暗くても金ちゃんの目が楽しみで堪らん!言うとるみたいにキラッキラしてるのがわかった。このままやと“超ウルトラグレードデリシャス大車輪山嵐(長すぎや)”くらってまいそうやなぁ。
でもまだこの技は金ちゃんいわく完成してないらしい。まぁよくアウトになっとるしなぁ。俺みたいに本気で戦える相手じゃないと使えん言うとったし。まぁ一般人に使ったら怪我ですまんやろなぁ。

軽くラリーを続けていると金ちゃんは気分が盛り上がってきたのかどんどん強い球で返してきよった。

あかん、やっぱテニス楽しいわ。
前世でかじるくらいやっとったから運動のつもりで始めたんやけど子供の体はええなぁ、飲み込み早くて。俺は楽しめればええんやけど、やっぱテニス部入らなアカンかな。ぶっちゃけ勝ち負けってどうでもいい。
前世では楽しいことややりたかったこと、全部我慢しとった。死ぬ直前に後悔したから今度は悔いのないように生きようって決めたんや。

「手ぇ抜いたらアカンでぇ!」

「しゃーないなぁ金ちゃんは」

原作崩さんように我慢しとったけど、もうええわ!我慢やめたっ!どうせ原作では書かれへんのやから大丈夫やろ。金ちゃんが打ったボールを返した後すぐにラケットを構える。金ちゃんはそれを見てニッと笑った。

「行っくでぇ!超ウルトラグレード、デリシャス…」

いきなり来るんかい。骨折れたらどないしよ、まぁそんなヘマせんけどなあ。金ちゃんが野性動物の如くぐるりと一回転すると高速に回転する剛球が放たれた。だがまだ甘い。もう少しラケットの真ん中で打てるようなったらもっと凄い球打てるようになるで。

「―――大車輪山嵐っ!」

これくらいやったら、“朱雀翔”で何とかなりそうやな。金ちゃんが打ったボールに集中したその時だった。


「光君っ!危ないで!!」


――――――!!!?
ふいにした藍華の声に集中が途切れ飛んできたボールによりラケットが吹き飛ばされた。

「ぅぐっ!!」

危ないと判断したのか此方まで駆け寄ってきたらしい藍華が俺を引っ張り剛球から逃したらしかった。まぁ確かに俺の朱雀翔を見たことない奴やったら驚くやろうな思ったけど、邪魔するとは思わんかった。

朱雀翔は体の中心にラケットを持ってきて高速の変則回転をかける技や。高速回転が加わったボールは垂直にバウンドし空高く飛んだあとネット近くに落ちる。バウンドしたあとふわって空高く飛ぶから朱雀翔って付けたんや…兄貴が(不本意やけど気に入っとる)。しかも変則的な高速回転加わっとるからバウンド前に返すとワケわからんとこに飛んでいくんや。只、手首にかなり負担がかかるからあんま使わん。

朱雀翔を上手く使えば金ちゃんの超ウルトラグレードデリシャス大車輪山嵐(やっぱ長いでこれ)の回転を止められるんやけど…始めて見た奴には自分からボールに当たりに行くように見えるらしい。んなアホな、そんな訳ないやろうに。せやったら俺どんだけドMやねん。

「邪魔すんな言うたやろ!」

思わず怒鳴りつけると藍華はびくりとし涙目になる。泣けばええちゅうもんやないで。

「そんなっ!光君怪我してまうかもって心配して…」
「要らん心配や。ていうかお前が来たせいで後少しで怪我してまうところやったやないか。せやから邪魔すんな言うたやろ」

捕まれたままだった手を振り払うと立ち上がりジャージの砂ぼこりを払う。藍華は腕を払われたことが悲しかったのか、俺の言葉に傷付いたのかわからんが顔を覆って泣いていた。何やねん、お前。前世とまったく変わってへんのやな。泣いて終わるんやったら、俺かて何回も泣くで。

「…金ちゃん、堪忍な。今日はもう終わりや」


そう言った俺の声は思った以上に冷たかった。





2010.3.23
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オリジナル技出しちゃいましたorz 苦手な方はごめんなさいっ!


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