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ランニング用に買ってあったジャージに着替えラケットを持つ。嗚呼、せっかくパソコン電源入れたんに結局何も扱わんかった。ため息を吐き電源を手早く落としていく。早足で階段を降りながら風呂に入ったの意味無かったなぁなんて思った。

あっ左手リストバンド忘れてもた。あれ二つで十キロ弱あるんやで。リストバンドないとそこら辺の中学生じゃ相手にならんからな。…言うとくけど金ちゃんは別やで、金ちゃんは最強や。まぁ俺の方が強いんやけどな。金ちゃんが俺に懐ついたのも最初会った日に金ちゃんに勝ってしもたからやねん。そんで、俺が強いこと黙っといてもらう代わりに俺は金ちゃんの相手をするちゅう約束した。

金ちゃん意外と律義で今まで約束破ったことないんやで。本当はめっちゃ聡い子なんかなぁ。

「あれっ光君出掛けるん?」

急いで運動靴を履いていた時後ろから少女の声が聞こえた。藍華や…お前オカンや兄貴らと話しとったんちゃうんか。
テニス出来る思ってテンション上がってたんに、一気にどん底や。

「…別にええやろ」

お前には関係ない、と言うように見てやれば藍華は腰に手を当て怒ったように顔を軽くしかめてみせる。いや、可愛くないでそれ。わざとらしいし。

「もう夜遅いし明日は駄目なん?」

いやお前には関係ないやん。オカンに言われるならまだしも何様やねんお前。

「友達待っとるんや」

「じゃあ私もついてく」

…意味わからん。お前単についてきたいだけやろ。一瞬そう言いかけたが、どうにかそれを言わずに飲み込んだ。金ちゃん待っとるしこれ以上藍華と話してると時間めっちゃかかりそうや。かと言って断るのはもっと時間かかりそうやな、面倒やわ。

「邪魔せんならええで」


ため息をつきながら言うと藍華は嬉しそうに笑い直ぐに準備するから待ってて!と言った。ちょ、待っとかなあかんのかい。面倒くさい。藍華はリビングに消えたかと思うと小さな鞄を持って来た。

「おまたせっ!ごめんなぁ、待ってもらって」

「別にええわぁ」

めっちゃ苛々したけど百歩譲って許すことにする。俺って結構心広い思わん?…て、自分で言うて虚しくなったわ。しゃーない、しゃーないと心の中で呟きながら玄関の扉を開くと金ちゃんが近所迷惑な音量の声で怒鳴ってきよった。
「ひーかーるっ!!!遅いわっ!めっちゃ待ってもたやんっ!わい早ようテニスしたいっ」

落ち着きなくそわそわしてる金ちゃんに思わず笑ってしまう。久しぶりに見たらかなりオモロイ。毎日会ってたらウザいもんやけどなぁ。

「ん?ねーちゃん誰や?」

金ちゃんは忙しなく動いていたかと思うと藍華を見て動きを止めた。

「初めまして!斉田藍華って言うんよ」

藍華は金ちゃんににこりと笑みを見せるが金ちゃんは数秒藍華を見つめるとすすす、と俺の背後に隠れた。なんや藍華めっちゃ嫌われとるやん、金ちゃんめったに人見知りせんのになぁ。野生の勘ちゅうもんか?あかんとわかっとるけど笑いそうや。

「(光っ!なんかわい、あのねーちゃん苦手やっ!)」

「(ほーか。俺もめっちゃ嫌いやねん)」

藍華に聞こえないように微かな声で言い合う。そして何事もなかったかのように藍華を見ると訳がわからずきょとんとしていて何故か面白くて笑った。

俺めっちゃ性格悪いわぁ。



2010.3.23

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