10 あの後、気がつくと部屋にいてどうやって部屋まで帰ってきたのかわからない。だが下の階からの楽しそうな話し声に夢ではないことはわかった。 「あ゛あああぁっ!!」 ウジウジするの面倒や!妹が何やっちゅうねん、俺はこの人生楽しめばええやんか。ガバッとベッドから勢い良く起き上がるとパソコンの前に座る。因みに俺はデスクトップのパソコン三台持っとるんやで。あと持ち歩き用に最新で薄型のノートパソコン一台。ノートパソコンは俺が好きなカーマインの色やって結構気に入っとんのや。 ふとパソコンを起動させながら部屋を見渡してみる。…何か中学生の部屋やないな、これ。黒と赤を基調とした大小三つのアンダー引出が付いたチェストベッド、棚にはw照明と小引出が付いている。勉強机は嫌や言うて買わんかったんやけど要らんやなんてそれめっちゃ変な子供やなぁ、今更やけど。そしてこの三台のパソコンはプレミアムブラックとかいう色したデスクに、他スキャナーやら何やらはデスクの横に設置してある亜鉛メッキの三段のメタルシェルフに。 …何処のデザイナーズマンションですか状態や。あ、忘れとった床に転がってん俺と同じくらいある巨大なウサギのぬいぐるみは「しろたん」言うんやで。かわええやろ!?お気に入りやねん。 無意味に椅子でグルグル回っていると通学鞄に入れっぱなしやった携帯が震えた。基本俺はサイレントかバイブにしとるんや、音鳴ると五月蝿いからな。 「って五月蝿いわっ!誰やねん!!」 メールかと思って放置した携帯は電話だったらしくずっとブルブル震えている。思わず携帯を引っ掴んで電話に出る。 『五月蝿いって何やっ!せっかく電話したんにっ!!光のアホー!』 携帯越しに聞こえてきた少し幼い声は小学の時によう世話しとったゴンダクレやった。何やお前かい…。久しぶりに聞いたその声に一気に脱力する。携帯の画面を見ると通知番号が見知った家電――遠山金太郎の家の番号やった。金ちゃんは携帯持っとらんしな、持ってても使えへんし。 「何か用あるん?無いんやったら俺疲れてるから切――」 『光ぅー!わい今めっちゃテニスしたいねん!』 疲れてる言うたやろー!!! 外周五十周マラソンやって今からゴンダクレとテニスしたら流石に俺は死んでまうわ!!!! 「…寝る。またな金ちゃん」 『えぇ〜〜!?光寝てまうん!!?ならワイはどないしたらええんやっ!テニスしたいー、テニスしたいぃー』 こう言い出すと金ちゃん止まらんしなぁ。どないしよ、ていうか金ちゃん止められる奴なんかおるんやろか。 「はー…しゃーないなぁ。今何処におるん?」 『光ん家の前におるで!』 「え゛!?ちょっ!!?」 ぇえええええ怖っ!おまっ!リカちゃんかぃぃい!ほらよくある「今貴方の後ろにいるの」みたいなのあるやろ、アレみたいや。…金ちゃんはやっぱ最強やな。色んな意味で最強で天才や、うん。 「金ちゃんそこで待っとき、今行く」 嗚呼…明日筋肉痛くらいで済むやろか。動けんくなったら金ちゃんのせいや。でもテニスすんの久しぶりやから少し楽しみやったりする。俺はテニスのことを考え笑みを浮かべた。 2010.3.22 |