サイレン



ドクンドクン、て警報音が胸の中で鳴ってる。
千歳先輩の手を引いて体育館倉庫に先輩を押し込んだ。千歳先輩はマットの上に座って薄く笑いながら手を差しのべてくる。その手を無視して俺は千歳先輩に跨がり啄むみたいにキスをした。久しぶりのキスやった。
千歳先輩はたまにフラッと消えてまう。放浪癖とかやなくて浮気、やけど。…いや違うか、俺が浮気相手やったわ。千歳先輩には最愛の彼女(最愛かは知らんけど)がおる。千歳先輩はその彼女をめちゃくちゃ大事にしとる。でも男やし、性欲はたまる。その捌け口が俺ってこと。セフレ?なんやろか。それも違う気がするけど。
まぁ取りあえず、そんな関係でも俺は千歳先輩が好きやった。
薄く開いた口に下を差し込んで絡める。千歳先輩は俺の好きなようにさせるつもりなのか何もしてこない。散々貪って、唇を離すと下だけを脱ぎ捨てた。下着はまだ足に引っ掛かったままやったけど我慢出来なくて千歳先輩にしがみつくとくすくす笑う声が耳元で聞こえた。
「むぞらしか子ばい」
そんな俺を千歳先輩はうっとりとした表情で見つめる。千歳先輩の手が頬を撫で、肩から腰までをなぞっていく。その行為に慣れた体はそれだけで快感を感じるのかぞくりと背筋が粟立つ。
体中を撫でられ、舐め取られ、甘噛みされて。水音が響いてぎゅっと目を瞑る。びくびくと体が震えて、頭の中が真っ白になる。脳の奥から溶けていくように、白く濁って何も考えられない。心は絶対に交わらへんけど、体の相性だけはええみたいや。
「ふ、ぅ、ああ、んぁ」
堪らなくなって千歳先輩の背中に爪をたててみた。千歳先輩はそんな俺を見てちょっと笑って可愛いやって。
きつく閉じていた目を少しだけ開けて先輩を見る。涙でぼやけているけれど先輩が笑ってるのがわかって胸の奥がズキズキと痛みだす。きっと今、千歳先輩は彼女のことを考えているのだろう。
だって、先輩の目が優しいから。
ええなぁ、先輩の彼女。先輩に愛されてて、ええなぁ。羨ましい。女に生まれていたのなら良かったのだろうか、そうしたら千歳先輩を奪えたのだろうか。女だったなら先輩は俺にもこんな優しい表情を見せてくれたのだろうか、そう考えて悔しくて堪らなくなって唇を噛み締めた。
「いけんばい、傷になっと」
でもむぞらしか、と笑って千歳先輩は俺の噛み締めた唇を指先でなぞる。
可愛くないで、やって俺千歳先輩を束縛したいて、千歳先輩が一番嫌がることしたいて思ってる。俺を一番にして欲しいって思ってる。先輩に俺だけを見て欲しいて、思ってる。
俺が眉を寄せたのを見て千歳先輩は困ったような顔をしながら目尻にキスをくれた。
「先輩、すき」
千歳先輩は何も言わない。それでも俺は満足していた。猫みたいに千歳先輩に擦り寄って甘えて、髪を撫で付ける手の感触に目を閉じる。
体を繋げて、終わりを恐れて、決して返ってこない愛を求めて。他人が見たら呆れるだろうこの関係でも、俺は満足していた。

だから、未だ鳴り響く警報音は、気のせいに違いない。






2011.3.23
うちの千光のシリアス率半端ないと思う。光君が可哀想な目に合うと萌えます。私が。
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