しゅう様へ



来年も再来年もきっと、(白石)




今日は白石部長と買い物という名のデートや。映画見て早めの昼食食べて、街の中をふらふらと歩きながら店を見て回る。部長の服の趣味とか分かっておもろい。ていうか、部長健康グッズ見かける度に飛び付くように店に入っていくのやめてや…。俺の存在忘れて嬉々として入っていくからかなり複雑なんやけど。まぁ部長らしいったら部長らしいんやけど。
足が疲れてきたところで部長と俺は近くにあった小洒落た喫茶店に入る。白と黒のコントラストが綺麗や。メニューを開くとぜんざいが目に入ってテンションが上がった。嗚呼、人のこと言われへんな俺。

「…実は此処前から財前と来たかってん、喜んでもらえたみたいで良かったわ」

ぜんざいを食べていると部長にそう言われ自分でも顔が赤く染まるのがわかった。前から洒落た喫茶店でデートすんの夢やったし…。しかも部長はそれを知ってて俺を此処に連れてきてくれたんやろ?めっちゃ嬉しい。嬉しいけどごっつ恥ずかしいわぁ、これ。

「部長、おおきに」

白玉をもぐもぐしながら小さく言うと部長は目を細めて優しく微笑んだ。そんな部長の表情を俺しか知らへんのや、て思ったら優越感と愛しさで胸が一杯になった。つまり、めっちゃ部長が好きってこと。ノロケちゃうで!いやノロケかなぁ…どっちでもええっすわぁ。

喫茶店を出た後再び街中を歩いているとふと目に入る路中の店。アクセサリーが綺麗で一瞬目を奪われた。新しいピアス、欲しいなぁ。

「見たいん?」

「少し。」

「なら行こか、付き合ったる」

店に入りガラスケースに入ったピアスを眺める。ガラス細工で出来た完成度の高いそれらに思わず感嘆のため息が漏れた。ゆっくりと全体を眺めているとふと視界の端に深い緑色が見えた。思わずその深い緑色を見つめる。青に近い緑、部長の瞳の色みたいや。ライトアップされているせいもあるだろうが、キラキラしてめっちゃ綺麗。

「気になるの、何かあったん?」

いきなり後ろから覗き込まれてびくりと体が跳ねた。ピアスに集中してたせいか何時もより過剰に反応する。びっくりした、いきなり出てこんどいて。そう思いながら部長の翡翠色の目と今まで見ていたピアスを見比べてみる。よく見るとちゃうなぁやっぱり。部長の瞳の色の方が透き通ってて綺麗や。

「どないしたん?そない見つめてきて」

「…あ、いや。部長の瞳の色に似てる思ったんやけど、ちゃうかったわ」

部長はガラスケースに入っているそのピアスを見つめて目を細めた。

「せやな、俺はこない綺麗な色してへんねんな」

「は?ちゃうっすわ。部長の瞳の色の方が綺麗やって言うたんですけど」

素直な感想を述べた筈なんに部長が真っ赤になって勢いよく此方を向いたせいで、此方までびっくりして赤くなった。赤くなるのつられてもた。ていうかまた部長自分の目の色卑下したな。綺麗やっちゅうのに。部長にとってはコンプレックスらしいけど…どうやったら自信持ってくれるんやろか。

「………財前、おおきにな」

小さく笑った部長を見て、それは此れからの課題やなぁなんて自分に言い聞かせてみた。いつか部長が、自信を持てるようになればいいと思う。





「今日は楽しかったで、財前」

あの後家まで送ってもらった。帰り道、人通りが無くなった少し暗い道を短い間やったけど手を繋いで歩いた。恥ずかしくて俺は顔を上げられへんかったけど。いつもより口数が少なかった部長も同じ気持ちやったのなら嬉しい。
家の少し前で手を離して向かい合うと暗くなった夜道を照らす電灯の光に部長の髪が照らされてキラキラしてた。謙也さんの太陽みたいなキラキラとはちゃう、言うなら月光みたいなそれに目を奪われた。こない綺麗な人、今まで一度も見たことあらへん。それくらい綺麗やった。

「俺も楽しかったっすわ。今日はおおきに、部長」

「ほんなら良かったわ」

くしゃりと頭を撫でられ髪が乱れる。まぁ、もう既に朝から出かけてたからワックスとかでまとめた髪はぐしゃぐしゃに乱れてたから気にせんことにする。

「光、」

名前を呼ばれ顔を上げると重なる唇。一瞬の、重なるだけのバードキスに目を瞑る暇もなく離れられる。二、三度瞬きをして部長を見ると意地悪くて綺麗な顔をして笑う部長と目が合った。目のやり場に困って視線をさ迷わせているとふいに手を掴まれ何かを握らされた。小さな四角い包みやった。

「何すか、これ」

「それは家に帰ってからのお楽しみや」

その包みを持った手をぎゅっと握られ正面から見据えられる。その真剣な眼差しに再び目を奪われる。そう、俺はこの目に惹かれたんや。ただ前だけを見つめるその瞳に。

「光を好きになって良かったて思ってる、ずっと俺の傍におってや」

「部長、プロポーズみたいっすわ」

「みたいやなくて、プロポーズやねん」

プロポーズ、て。俺らは男同士やねんで部長。籍も入れられんし子供も出来ない。将来は約束出来へんねん。そう考えたら涙が出そうになった。何時だって俺は迷ってる。たとえ中身が女な斉田南実でも、外側は男の姿や。怖くてしゃーないねん。…でも部長を見ると滅茶苦茶真剣な顔してて、冗談なんて思えへんかった。嗚呼、部長には俺の考えてることなんてお見通し、何やろうなぁ。
なぁ部長俺はずっと部長の傍におる資格はあるん?…なんて、聞いたら部長は何時もの綺麗な笑みで肯定してくれるんやろうな。自意識過剰とかそういうんちゃうけど、そんな気がした。

「…俺でええの?」

「お前が、光がええねん」

胸の奥が、熱くなった。堪らず目の前の部長にしがみついて広い胸に顔を埋めた。瞬きしたらぽろりと一粒だけ涙が出た。所詮嬉し涙ちゅうもんや。
部長はそんな俺を見て嬉しそうに笑い「指輪無くて堪忍な」なんて言った。指輪なんていらん。部長がおったらそれでええ。俺は背伸びをしてキスを送った。今の気持ちが部長に伝わればええな、と思いながら。

「(来年も再来年も、それから先も部長の傍に立っていられますように。)」


家に帰って早足で部屋に戻るとベッドに腰掛けて部長に貰った小さな包みを開いた。中から転がり出てきたのは真っ赤な深い色合いのピアス(多分昼間に見たあのお店のものや)。部長、俺が赤好きなの知ってたんや。部長がこれを買う姿を想像して笑みが溢れた。他にもアクセサリーとか豊富やったのにあえてピアスにしたところに、部長の俺に対する独占欲みたいなのを感じてきゅんとした。

「部長らしいなぁ」

俺は赤い色をしたピアスを翳しながら今度秘密であの店にあったあの部長の瞳の色と似たピアスを買いに行こうと思った。あのピアスが部長の耳に光ってたらきっとめっちゃ綺麗や。その姿を想像しながら俺は目を閉じた。

それから、部長の耳に深い緑色が輝くのはもう少し先のこと。




2010.5.6
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しゅう様へ!キリリクです、お待たせしました!!
ていうか、ちょっ長!!!?何だこれは(爆)深夜テンションで書きあげてて気がついたらこんなことに…!まぁいいか←
白石甘で買い物とかにお出かけする話ということで、こんな感じになりました…が…、お出かけ要素が限りなく少ない気がしてならない/(^o^)\オワタ
こんなお話でよければ貰ってやって下さい!



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