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時は平安、都に無数の妖が跳梁跋扈して、人々の安寧を妨げている時代
毎日日課になっている夜を徘徊してる途中、森の方から大きな爆発音が響き渡った
別の方角から妖気を一瞬感じ取れたがすぐに消え去った。

「こっちだよねもっくん!」
「ああ、相当な爆発音だったぞ」

真っ赤な狩衣を着て黒髪を結っている少年と見覚えのある大きな猫の様な体躯で兎並みに長い耳、額には赤い結晶が花の様に飾られ、首周りも同系色の突起が一巡してる。

「あれだ!」
「何かがいる!?妖か?」

現場に駈け寄ってみれば、草が剥げ土がむき出しになっており大きなクレーターが出来ていた。
その中央には真っ赤に染まって横たわっている一風変わった服装の男性の姿
それに添う様に闇に対抗するような白銀の毛並みの狗

「……!!!」

彼を守るように前に立ち、警戒し彼らに威嚇する狗
しかしその手足から真っ赤に染まってる

「あの人、血が酷い!どうしようもっくん!」

少年は威嚇しているのにビクつきながらも後ろにいる男性を気にかけた
見る限りいい状態ではない、全身真っ赤で生きてるか定かではない。
少年は意を決して狗に近づいた

「おい昌浩!!」

もっくんが吼えるが昌浩と言われた少年は震える手を狗に差し伸べた
ぴくりと、昌浩と聞いて狗は耳を動かした

「あのね、俺達は何にもしないから安心して?彼を助けたいんでしょ?俺んちで治療してあげるから威嚇しないでくれるかな?」

狗は威嚇を止めて後ろにいる男性の傷口を舐める
昌浩ともっくんもその男性に近づき、その悲惨な傷に顔を歪めた。

「妖怪にやられたのか?ひでーな」
「肩や腹の傷が酷い…一体誰がこんなことを……!」

左腕には血で書かれた梵字が新しい血で上書きされており、読めなくなっていた。
息をしてるか確かめるため顔にかかってる髪をどかした

「っ……!!」
「…お、れ……?」

露わにされた顔は昌浩と言われた少年と類似していた。
昌浩を少し成長させればこの男性と同じ顔つきになるだろう
同じ顔にびっくりするが、男性の顔は蒼白そのもので血の気が全くなかった

「今はこっちだ紅蓮!この人を運んで!!」
「ああ。…おい犬、お前は」

男性を乱暴に肩へ担ぎ、それをみた狗が吼え唸りも上げる
その怒ってる原因が分からず、紅蓮は顔をしかめた

「何だ」
「だめだよ、紅蓮!!相手は怪我人で重傷なんだら丁寧に扱わないと…!!!ごめんね、狗さん。こう見えても紅蓮はいい奴なんだよ。」

そっと頭を撫でて動こうとしない狗も紅蓮がわき腹に抱える
しかし急に動かされたせいか狗は悲鳴をあげ、手足が痙攣していた。

「待った紅蓮!この狗も怪我してる…」

昌浩は狩衣の一部を引きちぎって傷口を塞ぐ

「これで大丈夫」

にこりと笑う昌浩の笑顔が双子の弟に似ていた


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