ドンドン!!!ドンドン!!

「梓ー!!!私、夏希ー!!!」

ドンドンドン!!!!!

外側の扉から叩きつけるようなノックをしてくる。
しかも大声、この声は知ってる。
でもか細い男の声もする

「ここ開けてー!!!!」
「な、夏希さん!?ちょっとやめましょうよ。居ないんじゃないんですか?」
「そんなことない!!あの人殆どここにいるから!梓開けないと壊すよ!!」

うるさいうるさいうるさい
ムズっとクッションをつかみあげてドアに向かってぶん投げた。

「黙れよ、うるさいなぁ」

せっかくの安眠妨害されて気分悪い。
ぎゃんぎゃん吠える駄犬みたいに。
一瞬静まり返って、もう一眠りしようとしたら、またドアを何度も叩いてくる。

「やっぱりいるんでしょー!!!!開けてよ!!!」
「やめましょうよ、怒ってるんですよきっと!」
「あの人はこんなことで怒らないわよ!!」

少年Aとしよう。
正しいぞ、少年A。
あたしは怒ってる。
だからさっさとどっかに行って欲しい

「彼氏連れてきたの!!ちょっと協力してほしいの!それとご飯だから食べに来いっておばあちゃんが!!!」

携帯で日付を見ると丸一日経っており、時間的に夕方だ。
あのままぐっすりと寝てしまったようだ。

「クソガキが…」

扉の前に置いてある荷物を軽くどかして、クッションを片手に鍵を開ける。
勢いよく開く扉、そして飛び込んでくる

「むぐっ!!!」

彼女にクッションを顔面に押し当てた。
ちらっと隣にいるひ弱そうな男を見ると彼は顔を真っ赤にする。

「ど、どうも。」
「梓!あいたぐぶっ!!」
「お前、五月蝿い。睡眠妨害。出てけ。飯要らない。捨てろ。頼み事受け付けない。」

早口で夏希にそう言って追い出した。

「少年A。この女馬鹿だから。」
「え!?いや、え、そんなことは、あの、」
「じゃ。あ、理一さん。この人回収しておいてください。」

こっちに向かってくる理一さんにクッションを押し付けてる夏希を引き渡した。
終始オロオロしていた少年Aを放置してバタン!!と扉を閉じた。

「もう!なによ!!2年ぶりの再会じゃない!!梓のバカー!」

ドタバタと騒がしい足音が無くなり、廊下が静まり返る。
控えめなノックがしてむすっとしながらその扉を開けた。

「や、えらく不機嫌だね」
「寝てましたから。」
「……それにしても、…うん、健二君が真っ赤になるのも分かるかもね」
「は?」

ジッと理一さんはあたしの服を見る。
ずり落ちかけてるショーパンにキャミソール
明らかに寝起き状態だ。

「一回くらいは顔出せって姉ちゃんが言ってるぞ、それにばあちゃんも」
「………、行かなくてもいいんじゃないですか。一昨年だってそうでしたし…」

扉を締めようとしたらがっしりと日焼けしている手であたしの手首を掴んだ。

「家族なんだから飯くらいは一緒に食えよ。年に一回会えるか会えないかなんだから」
「ちょ、理一さん…!?」

無理やり腕を引っ張られ騒いでいる居間へ向かうことになった。

「ごめん、遅れた。」
「遅いわよ理一!………って梓も来たの?」

まるで歓迎されていないような口ぶりで、いやただ驚いているんだろうけど
二年ぶりに見る陣内家の顔に思わず眉間に皺を寄せてしまった。

「はやくお座り梓」

理一さんはすでに理香さんの隣に腰を落としており、棒立ちのあたしは慌てて理一さんの隣に腰を下ろした。
隣にいる夏希が嬉しそうな顔であたしに抱き着いてきた。

「やっと来た!待ってたんだからね梓!!」

全員じゃないけど、大方の陣内家が集まり、夏希が連れてきた彼氏だろう男に家系を教えていく。
本家の万里子おばさんと長女理香さんと長男理一さん。
万助おじさんにと長男の太助さん、息子の翔太、長女の仁美さん、次女の直美さん、三女の聖美さん
万作おじさんとその息子三人兄弟の頼彦さん、邦彦さん、克彦さんは仕事後に来るようだ。
その代わりにそのお嫁さんの典子さん、奈々さん、由美さんとその子供たちは来ている。

「憶えた?」

この複雑な家系を数分で覚えろというのが無理だろ夏希。
少年が凄く困ったような表情を浮かべているが直美さんの言葉で大人たちはお酒を注ぎ始めた。

「ビール飲めるか?」

こくりと頷くと理一さんがコップにビールを入れてくれた。
宴会が始まり、彼氏である小野健司の事を直美さんや理香さんが話し始めた。
東大、旧家、留学経験ありという優良物件の彼氏。
お酒が入っているのか大人たちはわいわい盛り上がっていく。

「何だっていいの。母さんが認めるなら、うちはそうやって回ってるの」

賑わう中、皆が笑を浮かべ満足げに頷き納得している顔をする。

「ばあちゃんが認めたって、ホントなのかよ!」
「もちろんだよ。健二さんは、うちの立派な婿さんだ。私の目に狂いはないよ。陣内家の人間に、半端な男はいらない。」

クイッとビールを飲み、栄さんの言葉に眉間を寄せてしまった。

「じゃなきゃ、家族や郷土を守れるものかい」

盛り上がっていく宴会に居心地が悪くなり、すっと立ち上がりその場から抜け出した。
庭が見える廊下に座り込んで煙草を一本銜える。

「……侘助…」

帰ってくるの、かな。

はみ出者はいらない
(あ、メール。)
(侘助だ。)


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