夕飯になると半分の親戚達が集まってきて、日中の静けさが嘘みたいだ。
「梓ちゃん、仁美さんはどうしたの?」
「仕事でイタリア行きました。」
「えぇー!なんで仁美がいないのよ!」
夕飯になるとキッチンはごった返して、その中で料理を作ったり運んだりしてる。
忙しい中で直美さんが煮物をつまみ食いしながら、仁美さんが来ない事に不満のようだ。
「しょうがないでしょ、デザイナーで忙しいんだから」
「仁美とお酒飲みたかったのにー!あんたさ、いつ帰ってくるか知ってる?」
仮にも一緒に住んでるんだからさ、と当たり前のように言いながら唐揚げをつまんでる。
直美さんと仁美さんは姉妹でとても仲がいいのだ。
「………さぁ?分かんないですね。」
ちょっとイラッとしてしまった。
捻くれてるのは自分でも分かってる。
ここは家族意識が強い。
その為、外部の人間にはとても冷たく接する。
なのに、血の繋がりのない人間を傍に置きたがる。
他人なんて突き放せばいいのに、栄さんが余計な事をするからだ
「はぁ?一緒に住んでるなら分からないわけないでしょ?」
「なに怒ってるんですか?不定期過ぎて帰ってくるのが分かんないって言ったんですよ?」
何故が半切れの直美さんがあたしを睨みつけてくる。
ほんと、ここの人間は好きになれそうにないな
「あなたがそんなに心配なら連絡取ればいいじゃないですか。まぁ、国際線じゃないと連絡が取れないと思いますが…」
完成した唐揚げのお皿を手にしてキッチンを出た。
広間に繋がる長い廊下を裸足で歩いていく。
「……気持ち悪い、な…」
キッチンで冷たい目がいくつもあった。
直美さんを含めて、栄さんの娘に当たる万里子おばさん。
ちょっとだけ呆れてた理香さん。
思い出すだけで引き篭りたくなる。
「気持ち悪いなら手伝うかい?」
ふっと手で持っていた重さが無くなった。
ゴツゴツのしっかりした手が見えて、隣を見ればニコリと微笑んでる理一さんがいた。
「久々だから疲れただろう?休むか?」
「……別に平気ですよ。」
「そうは見えないけど」
目線を同じにして、あたしの顔をのぞき込む。
「………人が多い所が苦手なだけです。あと、理一さんを探してましたよ、理香さんが」
そう言うと理一さんは顔を顰めた。
理一は姉の理香さんには勝てないのを知っている。
重たいため息を付きながら理一さんは唐揚げのお皿を渡して、キッチンへと歩いていった。
「……まぁ、嘘なんだけどさ」
そのまま広間に唐揚げをテーブルに置いた。
ひねくれ者で嘘つき
(姉ちゃんなんかあった?)
(え?何もないけど……)
(梓が呼んでたって…)
(……あー、じゃあ、これ広間に運んで)