部屋にこもって、OZにログインすればキングカズマが直ぐに訪問して来た
<明日から連絡取れにくくなるかも…>
チャットの吹き出しが出てきてショボンした表情で思わず彼の頭を撫でてしまった
<平気だよ、自分も実家だから中々ログイン出来ないし>
<…ごめん>
<ちょっと組み手しよ>
気晴らしにキングカズマと組み手をやりたかった。
ステージを作って、一般公開にした組み手会場には数え切れない観客が集まった。
<人集まってんじゃん>
<そっちの方がやる気出るでしょ?>
キーボードを見ずに激しい攻防戦を繰り返す
武器を持たずに素手だけでやり合う
<ちょっと、本気でやってる?>
<んー、六割ぐらい>
二人とも涼しい顔をしながら人体の急所を狙っていく
半分手抜きでやってれば、キングカズマは怒ったのかスピードをあげてきた
<カズマだって本番じゃなかった、じゃん!>
組む手なはずなのに徐々にヒートアップしていく
これじゃ、OMCのガチバトルみたいな形だ
しかも観客も盛り上がって煽ってくるから尚更だ。
<……っ!>
足がキングカズマの顎に直撃し、一瞬の隙が生まれた
一気に畳み掛け押し倒そうとするが、流石チャンピオン。
直ぐに体制を整えて、逆に押し倒された。
彼の拳がアズサの顔スレスレに止まった
<……お疲れ>
<一本取られた>
手を差し出され、それを握り締めて起き上がると大きな歓声が巻き起こった
<歓声いるの忘れてたね>
<途中から本気になるからだよ>
直ぐにそこのステージを消して、エリアをアズサの部屋に飛んだ
<明日からだっけ?連絡取れにくくなるの?>
<毎年、さ。>
<こっちもそうだよ。どこも似たり寄ったりなんだね>
ギシギシと廊下を歩く音と梓の名前を呼んでる声がしてきた
「夕飯の手伝いしてくれる?」
理香さんと理一さんがやってきて、理一の手には大量の買い物袋がある。
「今夜から直美ちゃん達が来るからね。」
「……後で行きます」
「よろしくー」
二人は部屋から出て行って、パソコンに向き直る
<ごめん、夕飯の時間だから落ちる>
<わかった>
ログアウトして、嫌な気持ちになりながらもキッチンへ向かった
「直美さんって誰だっけ……?」
もう名前も顔も覚えてない親戚さんたち
一年に一回くらいしか会わないから覚えてない
外から騒がしい声がしてきた
また増える
(あっれー?あんたも来てたんだー!)
(…………どうも)
(ほんと、無愛想ねー)