あたし達は早めに着いたらしく、他の親戚はいなかった

「……ぇえ?!今からですか!?」

荷物も部屋に置いて一息ついてる時に母が声を荒らげてるのが居間から聞こえてきた
母は有名なデザイナーの仕事をしていて、殆ど海外で活躍してる

「毎年この時期は無理だって言ったじゃない!もう飛行機取った!!?」

海外からデザインのオファーが急に来ることだってある
今回もそうなんだろう

「…わかったわ、今から行くわよ」

項垂れながら電話を切ってため息を着いた

「行くの?」
「…イタリアにね、どうしても私じゃないとダメらしくって」
「信頼されてるんですよ」

これから夕方の便で行くらしい
ここは上田だし、今から出ないと間に合わない
広げてない荷物を手に取り、祖母の部屋へと向かってった

「……暑いな…」
「そりゃ夏だからね」

背後から声がして振り返ればニコリと微笑んでる長身のおじさん

「二年ぶりだっけ…?」
「……………理一、さん?」

記憶が正しければ独身の自衛隊だったはず
あたしが通ってる大学じゃ有名人だ

「去年の夏は来なかったもんね」
「まぁ、そうですね…」
「大学はどう?仁美さんが呆れてたけど」
「………サボってます、でも単位は取れてるので大丈夫です」

理一さんから麦茶を貰って、慌ただしく玄関から出ていく仁美さんを眺めた

「仁美さん、どっか行くのかい?」
「イタリア。海外からデザインの依頼が来たらしいよ」
「それは残念だったね」
「いつものことだよ。来月くらいに帰ってくると思うし」

冷たい麦茶は暑い体を冷やしてくれる。

「…大学をサボってるのはなんで?」
「今日はよく聞いてきますね」
「二年ぶりだから色んな話をしたいんだよ」

ただの暇つぶし相手にはなるかも

「………既に知ってる知識を他の人間から説明を受けたってイラつくだけじゃないですか」
「?」
「大学のサボってる理由です」

理一さんは納得してしまい、確かに言葉を呟いた

「それに出席日数は気にしない先生達だし、結果さえ出てればいいんです」

世の中ってそんなもんでしょ?

(ミーンミーンミーン)
(夏が始まった)


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