どうやって部屋に戻ったかなんて覚えていない。
気づいたらクーラーの効いた涼しい部屋で横たわっていた。
ほとんどの物がないこの部屋に冷たい木目の床
パソコンにの画面にはAIについてのデータが広げられ、OZのアズサも表示されている。

「……あい、家族…」

ドタバタと煩く、騒がしい声がこちらまで聞こえてくる。
さしずめ今のニュースになっている事や偽装関係がバレたんだろう。
しばらくすると車の音が聞こえた。
この時間帯はみんなお昼を食べてる時間だろうが、全然お腹は減らない。

「アズサ、データの自動ハッキング。」

パソコンの画面が次々と変わりラブマシーンの行動が全て写しだされていく。
時間、ナビなどの交通情報、水道、誤報通報、様々なアカウントを乗っ取ってやりたい放題のようだ。

「梓、ちょっといいか。」

控えめなノックで扉越しから理一さんの声がした。

「OZでのパニック、梓なら何か知ってるんじゃないのか?」
「……市ヶ谷駐屯地、防衛庁情報本部の統合情報部一佐なら軍での情報があるんじゃないんですか?」
「…それでも梓の力を借りたいんだ。皆が大混乱してるんだ。」

頼むよ、と理一さんに言われるが、彼の言う皆というのは陣内家のことだろう。

「蔑んだ、軽蔑した目であたしを見て、関わろうとしなかったのに?今になって力を貸してほしいなんて都合のいい様に言うんですね。」
「梓。」
「だってそうでしょ?捨て子でかわいそうだからとか同情して引き取ったのはいいけど、曰くつきの厄介者はいらないって陣内の人は言ってますよ。」

だからあたしは情報にこだわる。
常に正しい答えを知るためにハッキングする。
建前で上辺でいいこと言っても腹ん中じゃそう思っていない。
だから、知る。
だから、盗む。

「今はそういうことを言ってるんじゃない。」
「本当のことですよ」

パソコン画面からぐちゃぐちゃになった情報が徐々に元通りになりつつある。
アズサがハッキングを続けていくとタイムログに陣内家のアバターが表示されている。
管理棟に侵入しパスワードを入力すれば簡単に管理棟に入れ、情報錯誤は落ち着いたようだ。

「あたしがこれ以上関わるとまたやっかみごとが増えるので余計なことは言えません。」

だからこれ以上あたしに関わらないで。

騒ぎが落ち着いた夜、万作さんの息子三兄弟も合流してに賑やかな夕飯を迎えているはずが、おばあちゃんと叫ぶ声や食器類が割れる音が響き渡ってきた。
耳をふさぐようにその場に散らばっているブランケットを手で掴み、身を隠すように覆いかぶせた。
その夜、侘助が陣内を飛び出したことを翌朝知ることになった。

どうして分かってくれないの?
(本当は―――)


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