赤椿 | ナノ
01
夜闇の中、赤色の狩衣を着ている少年が一人で妖退治をしている

「おー、そこだやれっ!」
「ばか!そこはだな…」

一匹の白い獣と少年と同じくらいの年の中性の子

「そこで真言を言うんだ!」
「昌浩とどめだ!」

地面に座り二人は白熱しながら応援している。
赤い少年は顔を引きつらせながら振り向きざまに叫んだ

「オン、アビラウンキャン、シャラクタン!」

観客に回ってる彼らに対して芽生える怒りを込めて言ってやった。
右手で刀印を構える昌浩に一人の拍手と気の抜けた声援が投げられた。

「おー、いいぞー孫ー。もうひといきだぞー孫ー」
「がーんばれ、まーけるなー、晴明のー孫ー」

椿は獣の前足を掴んであちらこちらに振り上げている
それをされてるもっくんは嫌な顔をしないで昌浩に声をかけていた。

「っ!!」

昌浩は一瞬妖の存在を遥か彼方に追いやりくわっと後ろに振り返った

「孫言うなーーっ!」

この声は近くの対屋で母子を守ってる
兄たちの所にもばっちり聞こえていた

「ん?」

対屋の方から鋭利な柏手の音と妖の気配と真言の声

「おーい、末孫ーあっちにいるぞー」
「分かってるよ!」

対屋に駈け寄って見れば獣が成親の迫力に負けて、妻戸の敷居の外に後ずさった。
そこに準備万端の昌浩が待ち構え刀印を掲げ振り下ろす

「臨める兵闘う者、皆陣列れて前に在り!」

三日月に似た清冽な霊力の刃が妖に向けて放たれる。

「…あ、」

ポツリと椿が声を零した。
妖がそれを寸前に回避して忽然と姿を消したのだ。

「くそ…っ、逃げられた」

悔しそうに唇をかみしめた昌浩、その傍らに隙なく構えてた物の怪が警戒を解いた

「黒い、あれは獣だな」
「もう少しだったのにねぇ…」

いつの間にか彼らの隣に佇んでる椿

「大体なんであの餓鬼が妖に狙われんの?変なことしなきゃ狙われないだろ、普通。」

椿は対屋にいる子供を睨み、それにつられてもっくんも対屋を見た
昌浩は慌てて、しっと口元に人差し指を当てる

「駄目だよ、そんなこと言っちゃ」
「はっ!」

椿は鼻で笑って対屋に戻ろうとしたら甲高い子供特有の声が響き渡った。

「もういやだ、もういやだ!こいつらみんな役立たずだ!晴明を呼べよ、こんな無能者なんてどっかにやって、晴明を呼べーーーっ!」

もっくんの瞳が不穏に揺らめいた。
のっそりと一歩を踏み出した物の怪を即座に昌浩が物の怪の尻尾を掴んだ

「ちっ…」

ぼそぼそと昌浩ともっくんが言いあう中、彼女は心底嫌そうな顔をして舌打ちをした

「…だから餓鬼は嫌いなんだ。」

その言葉は護衛として隠行している奴にしか聞こえなかった。
 
prev next
101/141


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -