赤椿 | ナノ
01
「椿!」

朝からやることもなく、簀子に座り高欄に足をいれてボケっと庭を見ていた。
名を呼びながらパタパタと走り寄ってくる藤姫に俺は首をかしげた

「なんだ?」
「今から露樹様と一緒に三条の市に行くの!だから一緒に行きましょう?」

三条の市
前に勾ちゃんとタイの護衛付きで行ったっきり行ってない。
むしろ極力外へ出ないようにしていた
ずっと音楽を流して、気を紛らわして心を読まないようにしていた。
俺は断ろうとしたが藤姫の目が子供の様に輝かしい

「………わかった…」

乗り気じゃないけど、しょうがない。
藤姫は満面な笑みで喜び、露さんの所に行った

「はぁ…疲れるなぁ」

耳につけているヘッドフォンを外して、無造作に頭を掻いた。
重たい腰を上げて、渋々次男坊の部屋に行き身支度をする。
一足先に門へ行き、露さんたちを待っていれば、被衣で顔を隠した二人が出てきた

「じゃ行きましょうか」
「はい!」

三条の市へ向かうのに少々歩くので、自然的に三人で話しながら行くことになった

「椿さんは一度行ったんでしたっけ?」
「そうですね。」
「え?そうだったの?」

俺は嘘を付いた。

三条の市は何回も行ったことがある
いやな思い出ばかりだけれども。
息苦しい場所で俺にとっては"最悪な場所"
こっちに来たあの時も息苦しかった

「椿大丈夫?」

藤姫が顔を覗きこんで来た。

「さっきから黙ってばっかり、気分でも悪いの?」

自然と上目遣いになり、眉を顰めて心配そうに聞いてくる

「全然平気だよ」

また嘘を付く。
俺の言葉は嘘で固められた言葉


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