無抵抗に暴力を振るわれる事には慣れたが、それがサイトー以外となると別だ。


「やべぇ、ちょう楽しんだけどっ!」

「お前、実はドSかよ!」

ぎゃはははと不快を通り越して、本気で吐き気を催してしまいそうな笑い声が響く。遠慮なく振るわれる暴力。

サイトー以外の人間にサイトーがくれた熱を冷まされる感覚。キモチワルイ。

「おーい、生きてるかぁ?」

「………ガハッ!」

「うっわ汚ねー」

口から吐き出された血液。そのまま目を閉じれば、気絶したと思い込む馬鹿共。つまんねーと吐き出して消えた。

もうこのまま本当に寝てしまいたい。すべての熱が冷めてしまっていない事を願いながら眠りにつく。ここが屋外であるとかは、忘れたことにしておく。







何時間寝たか分からないけれど、突然やってきた起床の時間。腹を思い切り踏まれた衝撃での起床なんて、最悪の目覚めだ。

最初に目に映ったのは、珍しく笑っていないサイトーの顔。ぼんやりとした頭で、随分と不機嫌だなと思う。


急に胸ぐらを掴まれて上半身を無理やり起こされる。馬乗りになってくるサイトーのドアップの顔はやはり不機嫌だ。

「汚ねー」

いつもなら笑いながら言われる台詞。お仲間からも先ほど同じような台詞をやはり笑いながら吐かれた。それにしても気持ち悪い程抑揚の無い声だ。

サイトーの人を殴りなれたゴツゴツとした手の、指先が顔をなぞる。時折真新しくできた痣を見つけては、抉るように力を入れてなぞる。

まるでそれは冷えてしまったそこに再び熱を上書きするようで、痛みよりも熱が勝ってしまう。これではまるでマゾヒストだ。

それでも止まることの無い痣を抉る指を、その痛みを、口直しするかのように確かめる。


触れた指先から徐々に浸食されていく、この過程がたまらなく愛しい






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テーマ「人外ファンタジー」
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