つい先日に平手打ちをくらったばかりの右の頬を殴られる。
「汚ねー顔。」
お前が殴ったからだろうなんて、そんな事を言える筈も無く目の前で下品に笑うサイトーを見る。端から見ると無感情といわれる目で。
「気持ち悪ぃんだよ」
「…………っ!」
何が気に食わないのか、左の頬にもう一発。すぐ目の前にはにやにやと笑うサイトー。
がしっと髪の毛を掴まれ、そのまま引っ張る。引きつった皮膚はそのまま剥げてしまいそうだった。
「その顔でタバコ買ってこいよ」
潰れすぎて年齢分かんねーかもな、なんて何が面白いのかサイトーは爆笑。
「おい、聞いてんの?さっさと行けよ」
もう一発殴られる前に逃げるように教室を出る。サイトーと連んでいる奴らからやなぎちゃんかわいそーなんて気色悪い野次と下品な笑い声が飛ぶ。不愉快だ。
教室を出てすぐにサイトーからのメールを受信。内容は、やっぱりお菓子。怒りを感じながらも足は純粋な子供のように素直に購買へ向かう。
「……ほんとに気持ち悪い。」
それはサイトーに向けての言葉なのか、自分に向けての言葉なのか。分からないまま呟いた言葉は静かな廊下に吸い込まれるようにして消える。
再び歩き出すと痛みで引きつる顔。
右頬と左頬、切れた口端からも感じる新しい熱。また消える事の無い熱に、自分の中にたまった重いモノがまた重量を増したように感じた。
鉛玉のような怒りは、やがてこの熱に溶かされ薄い皮膚を破り、ドロドロと出て行くのだろう。まるであの生ぬるい感情のように。ドロドロと。
強烈な怒りが最高の愛へ
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