紫苑に頼まれ夕飯の買い物をした帰り、曲がり角を曲がると見覚えのある背中を見つけた。
水色の髪に男のわりにほっそりした体。だるそうにバッグを背負い片手をポケットに突っ込んで歩く一人の学生。
「霧斗!」
「…あ。緑兄」
声を掛ければ、学生…弟の霧斗は立ち止まって振り返る。
「買い物?」
「紫苑に頼まれてな」
歩み寄れば、霧斗の頬に一筋の赤が走っていた。
「霧斗、その頬の傷どうした?」
「へ?…あぁ…。…枝とかに引っかけたのかな」
頬の傷を軽く押さえながら少々間を空けて言った霧斗に不信感が芽生える。
多分、その傷は他人によって作られたものなんだろう。
霧斗がたまに喧嘩をしているのは知っていた。そのほとんどの相手が、彼より年上だということも。
「帰ったら消毒しないとな」
「大丈夫だって。すぐ治るし」
ニヘラッと傷を付けた顔で柔らかく笑う霧斗。
そんな笑顔を見せられたら、心配せずにいられない。
守りたくなる。
「そんな顔するなよ緑兄。俺は大丈夫だから」
無意識に眉を寄せていた俺に霧斗はそう言って、早く帰ろうと俺の手を握って歩き出した。
お前は大丈夫だと言っているが、心配しているこっちはいつもハラハラしているのだぞ?
お前が怪我をしているのを見るだけで、胸が締め付けられた様に苦しくなる。
息ができなくなりそうなくらいに。
「霧斗」
「んあ?」
「無茶だけはするな」
「うん。分かってるよ」
息ができないくらいに