夕日に照らされた放課後。
何となく、嫌な予感がして、誘われたカラオケを断って教室に向かった。
部活に行くか帰ったのか、三年の教室は空で誰もいない。
「…あ……」
だけど、霧斗の教室にだけはいた。
自分の机に座って、頭を抱えて俯せになっている片割れが。それはまるで、スベテの音を拒絶しているようにも見えた。
あまり音を立てず気付かれない様に近付く。
「…霧斗」
ビクッと霧斗の肩が震えた。ゆっくり上げられた顔は、何処か暗くて。
何かあったのか聞きたかったけど、聞いても答えてくれないと思う。
「…青」
ぽつりと呟くみたいにオレの名前を呼んだ霧斗は、儚く見えた。
「どうか、したのか…?」
「………」
オレの質問には答えず、霧斗はオレに抱き付いてきた。
あまりない事に驚き一瞬固まるが、すぐ我に返る。
「霧斗?」
「悪い。少しだけ、少しだけでいいから…」
「別に少しじゃなくていーよ。霧斗が満足するまで、オレはいるから」
背中を軽く叩いて、オレも霧斗を抱き締めた。
こんな弱くなっている霧斗は珍しいし、何より自分が頼られているというのが嬉しくて仕方ない。
これくらいなら、どれだけ長い時間でも付き合ってあげるから。
オレも、霧斗の心地良い体温を感じていたいんだ。
触れ合う体温