交通事故

それがアイツの死因。

 ふざけてる。
運転手は携帯をいじっていての信号無視。詳しく聞けば、ぶつかりそうになった幼い子供を庇ってアイツは―――


「ふざけてるっ…!!」


ガンッと壁を苛立ち任せに殴れば、そこが若干へこむ。今は一人だからいいが、バショウにバレたらまた小言を言われちまうな。
 そんな事、今はどうでもいいが。


「何でっ…何でアイツがっ…霧斗がっ…!!!」


血が滲むくらい拳を強く握った時、不意に前霧斗が言っていた事を思い出した。


『もし…もし俺に何かあったら、ポスターの裏調べてみてくれ』


そういえば、そんな事を言っていたな。あの時は縁起悪ィ事言ってんじゃねぇって言ったが…。
 まさか、こんな事になるなんて…。

思い出した俺は、重い体を引きずって二階にある自室へ向かった。
 部屋に貼られている一枚のポスターの裏に手を入れれば、何か軽い物が落ちてきた。


「…封筒?」


何も書かれていない、封筒。糊付けされてなかったので簡単に中は確かめられた。
 中には手紙らしき紙が入っている。


「手紙…?」



【グラサンへ

これを読んでるって事は、俺は死んでるとかそういう事になってると思う。間違っても、好奇心で見たりしてねーよな?
 俺、結構いろんな奴等に絡まれたりするし喧嘩もしまくってるから、いつか殺られちまうかも知れねぇ。だからコレ書いておく。

もし、俺が死んでいるとしたら…あまり泣かないでほしい。ちょっとくらいならいーけどな(笑)
 たとえ俺がいなくなっても、俺の分まで生きろよ。

本当に、゙その時゙が来るまで。そしたら、俺は笑って迎えてやるから。
 俺はこの世からいなくなるけど、ずっとブソンの傍にいるから。

たまにでいいから、思い出してくれると嬉しいなーなんて思う。俺ってわがままだから、大好きな奴に忘れられたくなかったりすんのよ。
 でも、ブソンが幸せになるためなら忘れてくれてもいい。

どうか、俺がいなくても自分を見失わず、幸せになれることを祈ってる。

 ベタな台詞だけど、ブソンが幸せなら俺も幸せだから。


ありがとう。それと、ごめんなさい。


 俺はずっと、君を愛してます。





佐野霧斗】




手紙を読んで、涙が溢れた。


「霧斗っ…!!」


馬鹿野郎っ…!!相変わらず、お前は馬鹿だよ…!!

 そんなの、わがままなんかにならねーよ。

俺は、お前以外を愛さねぇから。お前しか、愛せねぇから。

 だから、


「霧斗ぉっ…!!!」



だから、今だけは


 君を想って泣かせて下さい


もう僕の傍にはいない君を想って、泣かせて下さい

 そうしたら、きちんと前を向くから。


君との約束を守るから、今だけは―――――









キミノスベテ

それは、僕のスベテでもありました