ピン ポーン


「バっショウ君、あーそびーましょっ」


ゴツンッ


「〜〜ッ!!?」

「…何をしているのですか貴方は」


童心を思い出させるフレーズを口にした彼は、額を押さえて蹲っている。
 恐らくドアをすぐ近くにいたので開けた時にぶつけたのだろう。


「いだだ…。何すんだよバショー」

「普通はドアから一歩下がっているものですよ。相変わらずお馬鹿さんですね貴方は」

「誰が馬鹿だ誰がッ!!」


額を押さえたまま立ち上がり、ワタシを見上げる少年、霧斗にやれやれと肩を竦める。


「それに遊びに来たのではなく宿題を手伝ってもらいに来たのでしょう?」

「バショウ様っ…!!」

「…はぁ。今度何か奢って下さいよ」

「もちろん!愛してるぜバショウ!」


ガバッと勢いよく抱き付いて来る霧斗に一瞬胸が高鳴ったが、敢えて気付かないふりをした。
 まったく…。こちらの身にもなって頂きたいものですよ。

抱き付く霧斗の頭を優しく叩き、そのまま引きずってリビングへ向かう。


「重いですよ霧斗」

「バショウほっせー。肉食え肉」

「そっくりそのまま返しますよ」

「俺昨日焼き肉食ってきたもん」


双子の兄と同じ事を言う彼に言葉を返すが、動じた様子はない。
貴方も十分華奢な体付きをしていると思いますがね。

 未だに引っ付いている霧斗を剥がしてソファーに座らせ、一息ついた。


「何か飲みますか?」

「どーぞお構いなく。バショウって二次関数得意?」

「まぁ普通ですね」

「一年と二年の復習なんだけどさー…。二次関数と正弦定理と余弦定理が理解できん……」


 あぁ、そういえば高一の時によく質問されていた様な気が…。そこまで苦手だったんですか。


「もう高校三年なのに二次関数出来ないのは致命的ですよ」

「その場では理解出来るんだけどー…次の日はちんぷんかんぷんに」

「霧斗らしい」

「とゆーことでバショウ、よろしく!」

「仕方ないですねぇ」


他の人にはあまりしませんが、細かい所まで丁寧に教えるとしますか。


 手取り足取り、ね。









それが君を好きって証明

(その頭脳わけて下さいバショウ先生)
(その台詞五回目ですよ)