「お前、佐野霧斗だな」


ダルそうに家に向かって歩いていた霧斗の前に、数人の男が立ち塞がる。
 自分よりも背が高い彼等は外見から考えて霧斗より年上だろう。

だが霧斗は困惑した様子を見せず立ち止まって男達を見上げる。


「人違いじゃないですか?」

「とぼけるな。お前、紅蓮の龍の弟で金色の悪魔の知り合いだろ?」

「紅蓮の龍と金色の悪魔?」


あぁ…そういえば中高時代、火影兄は紅蓮の龍でブソンは金色の悪魔って言われてたらしいなぁ。


「はぁ…。だとしたら何だよ」


早く帰ってプリン食べながらゲームしたいのに。
内心で呟く霧斗に男達は嫌らしい笑みを浮かべて口を開く。


「俺達とタイマン張れ」

「タイマンの意味分かって言ってんの?」

「うるせぇ!!」

「黙ってついて来やがれガキ!」


すました顔でいる霧斗の態度が気に入らないのか男達が声を荒らげる。


「ていうか、何で俺?その紅蓮の龍と金色の悪魔に恨みあるなら本人の所に行けばいいだろ」

「状況分かって口利いてんのかテメェ?」

「あー…。怖くて手が出せないから弟&知り合いの俺を狙うと。単なる腰抜けかよ」

「なっ…!?」

「ガキ、口の利き方に気をつけな」

「そうだぜ。そんな可愛い面して。後で泣きながらおれ達に犯じゃべらッ!?」


男の台詞を遮る様に何かが男の頭に飛んで来た。
 ゴスッと痛そうな音がし、男と共に地面に転がったのは携帯電話。


「おかじゃべらって…何だ?」


そんな事を呟きながら携帯が飛んで来た方に顔を向ければ、そこにいたのは金髪にサングラスをかけた大柄な男が一人。


「あ、ブソンだ」

『なんだと!?』


霧斗の言葉に男達が声を上げ一斉に同じ方を向いた。
 携帯を投げた張本人であるブソンは明らかに不機嫌そうなオーラをまといながら、ゆっくり歩みを進める。


「何してんだぁテメェ等?」

「ひぃ!?」

「や、やべぇ…金色の悪魔だ!」

「おい」

「は、はい!?」


立ち止まったブソンに男達が恐怖に体を震わせる。
指の骨をボキボキ鳴らす金色の悪魔を前に、男達は半泣き状態だ。それを尻目に霧斗はしゃがんで携帯を拾い気絶している男をつついている。
 反応しない所を見ると、どうやら本気で気絶しているらしい。


「今すぐ失せろ。それから、二度とコイツに近付くな」

『は、はぃぃいいすいませんでしたぁああ!!!』


サングラスの奥で瞳が鋭く光る金色の悪魔の言葉に、男達は情けない声を上げ気絶した男を連れて退散して行った。


「チッ。雑魚が」

「つか携帯いいのか?」


立ち上がり、拾った携帯を持ち主に返す霧斗の言葉にブソンは「あぁ」と頷いた。


「今機種変して来た帰りだからな。それ前使ってたやつ」

「なるホロ。おニューにしたのか。あと、サンキューな」

「おう。お前、まだ絡まれんのか?」

「まぁ昔っからだし、いい加減慣れるよ」

「悪ィな…」

「ブソンが気にする事ねぇよ」


バツが悪そうな顔をして後頭部を掻くブソンにニッと笑みを浮かべて言う。
 中高時代に(今もだが)暴れまくり有名になっている火影や紫苑達の弟でありブソンの知り合いである霧斗は、それを理由に彼等に恨みがある奴等から目を付けられていた。

今はもう喧嘩もそれなりに強くなり慣れているので本人はあまり気にしていないが。


「お前、紫苑達に言わねぇのか?」

「言う必要ねーじゃん」

「あるだろ」

「いーんだよ。無駄な心配かけたくねぇ。早く帰ろうぜ」


 まぁ、言わなくとも彼の兄達は知っているのだが。
大半は恐れて霧斗にですら手を出せなく、絡むのはそれを知らない者か自分の実力を過信している愚か者たちだけ。


「お前って、ほんっと馬鹿だよな」

「うるせぇグラサン」

「グラサン言うなチビ」









ばーか

 だけど、そんな君が好き

(なぁ、おかじゃべらってなんだと思う?)
(…どうでもいい事だろ)