「やけに静かだな」
「んー?」
デスクの上に両肘を置いて両手を組み合わせていたサカキが、ソファーに座ってぼーっとしているキリナに声を掛けた。
サカキの声に気付いたキリナが顔を上げ、声を掛けた人物に顔を向ける。
「いやー、ただシルフカンパニーの時の事とか思い出してただけさ」
「少しは大人になったかと思ったが……」
「おーい。それって軽く嫌味かー?」
「さぁな」
ククッと喉の奥で笑うサカキにキリナが口を尖らせた。
「そう怒るな。あれから一年経つが、全然変わっていないなお前は」
「それって子供だって言いたい訳ですかサカキん」
「その呼び方やめろ」
デスクの前に拗ねた様子で立つキリナにサカキはそう言いながらも楽しそうに笑う。
「ばっちり成長してますよ俺は」
「全然だな」
「むっかー。何だかんだでいっつも子供扱いしてくれますねサカキさん」
「それはお前が子供だからだ」
そう言ってまたククッと笑ったサカキを、キリナは不機嫌そうな表情を浮かべて見ていた
「子供扱いすんなちくしょー。オッサンめ」
「五月蠅いクソガキ」
子供扱いしないで
(子供扱いをしなければ、何かが崩れてしまいそうで)
(この想いに気付いていながらも、必死にそれから目を背ける)
(お前は気付いていないだろう?)