落ち着けません ― 1
『蔵兄、おはよう』
「おはよくるみ。何や随分と起きるの早いなぁ」
『は…はは。ちょっとね。蔵兄こそ』
「俺はジョギングや。どや?一緒に───……」
『やらなーい』
「即答かい!まぁええわ。ほな、行ってくるで」
『行ってらっしゃい。気を付けてね』
「おおきに」
第2話
落ち着けません
春休みの真っ只中。
今日も私の心は休まりません。
だって……
「この朝御飯、くるみが作ったん?めっちゃ旨いやん!」
『いや、朝御飯と呼べる程の大した料理じゃないんだけど』
「何言うてんねん、こんだけ出来れば上等やで!兄ちゃんも鼻が高いわ」
最近、一緒に住むことになった義兄・蔵兄の存在がとても大きいからです。
春休みで家にいる事が多い私と蔵兄。
と言っても、蔵兄は部活があって家にいない時もあるんだけど。
お父さんと世羅さんは勿論お仕事で留守中。
イコール必然的に私と蔵兄が家に二人っきりになる訳でして。
正直、結構神経使ってます。
だって、いくら兄になる人だからと言って、今まで赤の他人として生活してきた人だもん。
しかも超絶イケメン!
超絶さわやか好青年!!
今まではお父さんと二人っきりだったからゴロゴロしたり、だらしなくしたりしても全然大丈夫だったけど、蔵兄の前でそういう事は出来ません。流石に。
まず朝御飯が手を抜けないし、お風呂入るのにもトイレ行くにも(特に大の方!)、生理が来ちゃった時も、全部気を使わなきゃいけないのだ。
今朝なんかお腹痛くなってきたから、誰も起きてないうちにトイレに行こうと思ったのに蔵兄に遭遇しちゃうし。
だから本当に私がくつろげる時って、お父さんも世羅さんも蔵兄も留守にしている時だけなんだよね。
それに……
「くるみ、隣駅のでっかい公園知っとる?」
『自然公園の事だよね?うん、知ってる!すっごく大きいよね』
「あそこな、ちょうど今、桜が満開みたいなんや。どや、今日一緒に見に行かへん?」
『……へ?』
「桜、見に行こうや」
蔵兄と一緒にいると、ドキドキして心臓が破裂しちゃいそうなのです────。
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