宣戦布告と友情 ― 1


『と、言うわけなんだけど…千兄』

「…………」

『急にごめんね、今日、蔵兄と音撫さんも一緒する事になりました』

「…………」

『せ、千兄??』

「……ぷ、」

『へ!?な、なにっ!?』

「クックッ…す、すまんね、くるみちゃん、くくっ、あ、あまりにも予想してた通りになったけん、つい」

『予想通りになったのー!??』

(そ。白石の魂胆、丸見えたいね)


第14話
宣戦布告と友情



『わー!千兄、見てみて!大きいネコバスがいるー!あれ乗っても良__』

「あぁ、小学生までOKって書いてあるけん。ばってんくるみちゃんだったら大丈夫じゃなかと?」

『………千兄?(じろり)』

「ははは、むぞらしか、むぞらしか」

そう言ってポンポンと頭を撫でる千兄。
もう!子供あつかいして!!

ぷぅと顔を膨らませてジロリと千兄を見た時だった。

「何やくるみ、恥ずかしがらないで小学生達に混ざって行って来てもええねんで?」

ずいっと私と千兄の間に割って入る蔵兄。と、その後ろにちょこんと佇む音撫さん。
あ…音撫さんと千兄が心なしか苦笑いになっている様な。

それもそうだ。
蔵兄が、千兄とのデートについて来るって言ったのが昨日の夜のこと。
千兄は、この突然の乱入についても「想定内だ」と言っていたけど、私と千兄が喋る度に割って入って来るとは思いもしなかっただろう。

「…何やくるみ、その目は」

『いや、別に…』

イチャイチャするのは禁止だとか、ずっと見張ってるだとか言った蔵兄。
昨日の言葉はどれだけ本気なのだろうか?
と、いうより、その真意は一体何なのか。


「お、見てみ杏樹。このセル画、もののけ姫のやつやろ?」

「本当、自然の絵がすごく綺麗ね」


(……何よ、自分だって…)

私にはダメと言いながら自分は音撫さんと随分仲良さげにジブリ展を堪能していて。
何ソレ訳分かんない。

(確かに、まだ気持ちがハッキリしてなにのに千兄に気を持たせる態度を取るのは、いけないって分かってるけど。でも…)

ごく自然に手を繋いでいる蔵兄と音撫さんを見ると、胸が軋むんだよ。
キリキリいって、とても苦しいんだよ。
喉の奥が圧迫されている様な息苦しさがとても辛いんだよ。


蔵兄と音撫さんを、見ていられない。
だから千兄に縋るしかないんだ。
ないのに蔵兄、それは無いよ。


『……蔵兄のバカ、自分勝手』

ぽつりと呟く。
けれど、そんな呟きは今なおも苦笑いしている千兄にしか届いてなくて。

そんな千兄は困った様に笑いながら、ぽんっと頭を撫でてくれたのだった。

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