歪んでいく、ココロ − 1


今日も初夏の陽射しが強く照らす中、珍しく1人物思いに耽っている男がいた。

────白石蔵ノ助。
この四天宝寺高校の絶対的アイドルである。
彼はミルクティーブラウンの髪を靡かせながら、1つため息をつき、久しぶりに部活へと足を運んだ友人に言葉を投げた。

「………なぁ、千歳。この前、お前ん所の美化委員会、活動してたやろ」

「あー、そうだけど…どないしたと?」

「くるみさ、何か言ってなかったか?例えば…俺の、悪口とか」

「…………………は?」

あまりの唐突な質問に、思わず口をポカンと開けて白石を見る千歳。

「くるみちゃんが?特に何も聞いてないけん。白石、くるみちゃんに何ばしよっとね?」

「いや、何もしてへんがな。してへんけど」


(最近。くるみが急によそよそしくなったんは、何でやろか?)


“───蔵兄っ!”

ついこの間まで聞こえていた、屈託のない笑い声。
それが最近になって全くと言って良い程、自分に向けられなくなっていたのだ。

「……ほんま、どないしたんやろ?」

そう呟きながら、ハァと1つため息をつく白石。そんな彼を、千歳は複雑な想いで見ていたのだった。


第11話 歪んでいく、ココロ



「──────と、言う訳で。ジブリ展に行くばい、くるみちゃん」

『え、千兄。どうしたの、いきなり』


どうもこんにちは。くるみです。
今週は美化強化月間という事で、私は例の如く千兄とペアになって校内の点検をしてたんだけど。
突然の千兄の言葉にきょとんとする。
あれ?もしかして私いま、お誘いされた?

ポカンとしている私を見て、千兄がくつくつ笑いながら後を続けた。

「俺、ジブリが好きじゃけん。丁度チケットが2枚あるけん、良かったら一緒に行かん?」

『行く!行く行く行くー!私もジブリ大好きだよ!それって隣の駅の美術館で期間限定でやってるヤツだよね?行ってみたかったんだ』

「ははっ、良かった。したら、今週の土曜の午後空いてると?」

『全然余裕〜!千兄、どうもありがとう!楽しみにしてるねっ』


なんと!
まさかのお誘いでした!
千兄、ジブリが好きとか、何だか和むなぁ。

実はここの所、気持ちにあまり余裕がなくって、ずっと塞ぎ込んでたから、こういった気分転換は本当にありがたいんだ。

この前……──蔵兄に音撫さんと間違われて抱き締められた夜。
私は凄く悲しくて辛くて、ココロが痛くて、本当にどうしようもなくて。あの日以来、どことなく蔵兄の事、避けてたりしてるんだよね。

もちろん、このままじゃいけないって事は分かるし蔵兄にも悪い事してるって分かってるんだけど……

(だって……変に近付くと、その後が辛くなるんだもん。勘違いしない様に、距離あけなきゃダメなんだもん)


家にいるのは、辛い。
けど、かと言って学校で音撫さんと一緒にいるのも辛い。

だから……………


『千兄。土曜日、早く来て欲しいな』

きゅっと千兄の裾を掴んで、ポツリと言った。
今の私が安心出来る場所って、もしかしたら千兄の隣だけなのかもしれない。
すると千兄は「すぐ来るばい」と言って、優しく頭を撫でてくれたんだ。


だけど、その時私は全然気付いてなかったの。
この時千兄が、複雑そうな顔をしていた事。
そして、千兄の気持ちも、何一つ。

自分の事しか、考えれてなかったんだ。


ここだけが、安心出来る場所……だよね?

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