予想外です ― 1


「うっわー、くるみの新しいお兄ちゃんって、メチャクチャ人気やん」

『う…うそでしょ?』


第3話
予想外です



春休みが終わり、無事に四天宝寺高校に入学した私は、中学の時からの親友・心とテニス部の練習を見に来ていた。

と言うのも、世羅さんがお弁当を作ってくれたから、朝練に行ってる蔵兄に渡す為で。
だけど一人で突入するのは恥ずかしいので、無理を言って心について来てもらってるんだけど…


「キャーっ!白石くん、むっちゃかっこええ!」

「頑張って白石くんーっ!!」



こ、このギャラリーは何ですか?


あまりもの蔵兄人気に軽く目眩を覚える。
そうだよね、確かに蔵兄はカッコ良いし優しいし、人気がないハズない。
だけど、ここまでだったとは予想外で、改めて蔵兄とは住む世界が違うんだなって思い知らされた。

そんな複雑な想いを胸に、練習風景を見ていると、とある事に気付く。


「ん〜〜エクスタシー♪」

「これが浪速のスピードスターの実力っちゅー話や!」

「いっくで〜ユウく〜ん☆」

「小春ぅぅぅ!」

「無我の境地……発動ばい!」

「ワシの波動球を、受けてみよ!!」



………………。

えぇぇぇぇ?

何か、“絵”だけで見るなら皆さんキラキラしていて凄く凄くカッコ良いんだけど…

『濃いのが勿体ないね』

「せやな。せっかくのイケメンが台無しや」


そんな事を言っても、やっぱりカッコ良いものはカッコ良くて。私の眼は自然と蔵兄ばかりを追っていた。

あっという間に朝練の時間が終わり、蔵兄を始め部員達がコートの外へと出てくる。
と同時に、蔵兄の周りは女の人達で溢れ返ってしまった。


「白石くん!お疲れ様〜冷やしたタオルあるけん、使ってーな」

「ウチもな!スポーツドリンク持ってきたんよ!」

「私も!」

「ウチも!」



待って待って!!何なのこの人達!
これじゃあ蔵兄にお弁当が届けられないよ!
頑張って蔵兄に近付こうとするも、あっという間に群がる蔵兄ファンに圧倒されて、簡単に女の子達のお尻に弾き飛ばされてしまう。


『きゃっ』

「くるみ!?大丈夫かっ?」

「…………、くるみ??」


興奮した女の子に弾かれて、びたんっ!と地面に膝をついた時だった。
私を呼ぶ心の声に反応して、蔵兄の眼が初めて私の姿を捉えた。

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