エピローグ ー 1


「はぁ…ほんまにマジでアイツらありえへん」

『ふふっ、光くん、まだ怒ってたんだ』

「当たり前や。あの場面で邪魔しにくるとか…さっさと帰れば良かったんに長居するし」

『まぁまぁ、二人とも心配して来てくれたんだし、わざとじゃないと思うから』

「……ちゅうか、雪恵。随分余裕な顔しとるのな」

『……へ?』

「雪恵のクセに生意気やアホボケのろま」

『むぎゅっ!ちょっ、ひ、光くん!ほっぺを潰さないでっ、痛いいたいっ!!』

「ぶさいく」

『光くん、酷いよーーー!!』


〜エピローグ〜


7月20日。
私はこの日をどれ程楽しみにしてきたか分からない。
だってね、今日は大大大好きな彼氏の誕生日なのです!

光くんは夕方まで部活があったから、練習後に待ち合わせをして、私達はとある甘味屋さんへと直行した。

そう。ここは私達がまだ付き合ってない頃。
二人で初めてデートした甘味屋さんだ。
ここにある善財が凄くすごく美味しくて、また光くんと来たいなって思ってたから、今日来れて本当に良かった。

そんな中、光くんは冒頭の様に少しご機嫌ナナメな訳でして。それはこの前、仲直りした時に千尋ちゃんと柏木くんが色々と邪魔をした事を、ここ最近口癖のように文句を言っているからだ。

「アイツらは昔からズカズカとパーソナルスペースに入り込んでくんねん。物理的にも、精神的にも」

そう言って拗ねた様な顔をしながら、善財を口にする光くんが何だか可愛くて、思わず笑みがこぼれてしまう。何だかんだ言って光くん、二人の事大好きだよね。



『そう言えばここって、初めて光くんが私の事を名前で呼んでくれた所なんだよね』


正確に言えば小さい頃、既に名前で呼ばれていたからそうではないけど。けど、再会して初めて名前で呼んでくれた場所がここで、だから私にとって凄く思い出深い場所なんだ。

「あぁ…まぁ……せやな」

『初めてデートした場所もここだったね』

そう言うと、光くんは「おん」と言いながら少し視線を逸らした。
あ。光くん、今照れてる。

『光くん?おーい、光くんー』

そう言いながら、ツンツンと腕をつついてみると、「うるさいわ」って言いながらぺちっと両手でほっぺたを潰された。
痛い……けど、両手で包み込まれている(※潰されてます)感触が、何だか優しくて、あったかくて。まるで心の中で幸せが広がっていく感じ。

『ふふっ。光くん、大好き』

「………、ほんま恥ずかしいヤツ」


大好きが、止まらない。

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