想い ー 1
『光くん、椅子に座ってて、今飲み物出すから』
「…ん。」
促されるままに適当にソファーに座る。
いつもこの家に行く時は色んな事に緊張しながら過ごしているけれど、今回は訳が違う。
あいつら…美山と柏木が雪恵に訳分からん事を吹き込んだらしい、絶対に予想外の何かが起こるハズなんや。
何事もなく終わればええんやけど。
第2夜 想い
『ひ…光くん、この英文の和訳が分かりません…』
「アホ。単語1個1個の和訳だけで読解しようとするから分からへんのや。単語や熟語だけやなくて、全体を見て構文がないかとかにも気を使わなアカンやろ、ボケ」
『…何か光くん、今日は妙に攻撃的だね。いやいつもなんだけど、何か様子が違う…』
「気のせいや気のせい」
『いひゃい、いひゃい、いひゃいれす、ひはるふん(痛いです、光くん)』
夕方の6時。
俺らは意外にも真面目に試験勉強をしとって、アイツらが言ってたような“変な事”は一向に起きる気配がなかった。
“いつ”、“なにが”起きるか想像も出来ない俺は、雪恵にはいつもと様子が違って見えたらしい。
そんな指摘を受けて思わず雪恵の両頬を抓ってやった。
雪恵の癖に勘が働くなんて、生意気やで。
そんな風に、どこぞの国民的アニメのイジメっ子の様な台詞を脳内で毒づいた時やった。
(あ、アカン…)
変な風に近距離で視線が絡まる。
いつになく熱っぽい視線を向ける雪恵を見て、俺は本能的に顔を逸らせてしもた。
そう。
それはもう、あからさまに思いっきり、や。
これには雪恵も気付いて、……そしてショックを受けたみたいやった。
キュッとスカートの裾を握り締めながら、震える声で言ったんや。
それは、思いもよらない一言やった。
『…やっぱり、光くん。幼児体型は嫌いなんだ。だから私の事、そんなにギュッてしてくれたり、しないんだ』
「…………、は?」
余りの突拍子のない発言に、思わず間の抜けた声を出してしもて。
は?
俺が?幼児体型は好きやないから?
だから雪恵とハグしない…やって?
…は??
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔っちゅーのは、今の俺の様な顔の事を言うんやろな。
それ位オレはこの発言に驚いてもうた。
…あー、何となく分かった。
つまり…そういう事か。
沈黙しているオレを見て、それを肯定だと思ったらしい。
雪恵は何とも情けない顔をしながら後を続けた。
『柏木くんが教えてくれたの。光くんはロリ路線ではないって。絶対に、…その、巨乳好きだって…そんでもって、私には胸が無いってハッキリ言われたの』
おいおいおい。
コラ柏木。
お前、雪恵の事をそんな目で見とったんか。
ふざけんな。
やらしい目で、雪恵の事見んな。
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