おれがもらうよ - 1


>>財前視点

「「ありがとうございました!!」」

日が沈み、さっきまでオレンジ色だった景色が夕闇に変わった頃、漸く今日の合同練習が終わった。

やけど、この後両校の交流も兼ねて流しそうめんパーティーをするとか言う事で、引き続き校内に残って諸々の準備をする羽目になって。

「よっしゃ!食ったもん勝ちやー!」と叫ぶ謙也さんを横目で見つつ、はぁ…と溜め息をつくのやった。


第8夜 おれがもらうよ


今日の練習は流石にキツかった。
さすが立海大付属なだけあって、1人1人がえらいエグいテニスをしよる。
…まぁ、金色さんや一氏さんらも相当エグいねんけど。

それでも特に幸村のテニスのエグさときたら半端なくて。
何やねん、五感を奪うとか。
あの金太郎に「テニスが怖い」と言わしめたテニスを身を持って体感したけど、もう戦いたくないわ。

それに、何や昼過ぎから立海の連中から妙な視線を感じるんや。
それは仁王や、丸井、同い年の切原とかいう奴らで。
中でも幸村の視線が一番鋭くて。

…別に俺はそんなん気にはせんかったけど、やっぱり気分良いモンではない。
やから部活が終わったら速攻で帰ろうかと思っとったのに、流しそうめんパーティーとか…どういう事やねん。

何となく苛立ちを覚えて、とりあえず隣でギャーギャー騒いでいる謙也さんに軽く蹴りを入れる。

「痛っ!な、なにすんねん!財前!!」

「別に。謙也さんがあまりにもギャーギャーうっさくて迷惑やったんで、黙らしただけですわ。強いて言えばボランティア活動やな」

「んな!せやったら普通に口で言えばええんちゃうか!?」

そう言って一生懸命応戦する謙也さんを見事に無視して紙皿とコップを取りに行く。
すると、今度は部長が俺の所に話しかけてきた。

「あれ、雪恵ちゃん達は?もう帰ってしもたん?」

はぁ。この人は本気で俺に聞いてるんやろか。何でもない様な顔をしとる割に、何や作為的なモンが感じられるんやけど。


「……そんなん知りませんわ。雪恵のことなら向こうの学校の連中の方が良く知ってるんとちゃいますか」

そうぶっきらぼうに答えると、部長は「さよか」と言って少し寂しそうな表情をした。

「…なあ、財前。これは俺が首を突っ込む事やないっちゅーのは十分承知の上で、1つだけ言わせて欲しいんやけど」

躊躇いがちに言っている様で、そのくせ妙に強い意志を感じる口調で部長が口を開く。

「…あの事があってからな、財前。お前、無理しすぎっちゅうか、不自然すぎや。何に気をとられてるかとか聞かんけどな、見ていて痛々しいで」

…やっぱりか、そうきたか。

想定していた通りの台詞が部長の口から紡がれる。

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