エピローグ ー 1


* * * * * * * *


とある晴れた土曜日の昼。

私は単身、とある所に足を踏み入れていた。


『うーわぁ…話には聞いていたけど、本当に凄い所だなぁ』


ここは大阪の四天宝寺高校の校門前。
…のハズなんだけど、どうしてもそうは見えず、お寺にしか見えないのは気のせいだろうか?

あれれ?
校門がお寺風なのは中学校じゃなかったっけ?
もしかして高校もこんな感じなのかな?


『うう…、緊張する…』


あれから…あのサバイバル生活から7ヶ月程経っていて、今も私は蔵ノ介さんと順調にお付き合いさせてもらっている。

確かに遠距離は辛いし寂しいし、蔵ノ介さんに他に好きな人が出来たらどうしようとか不安になったり、そういうのばかりの毎日だけれど、毎日くれる電話やメールがその不安を溶かしていってくれて。

本当に私は幸福者だなぁって、つくづく思う。


そして、今日。
4月14日は、蔵ノ介さんの誕生日なのだ。
この日ももちろん、誕生日とは関係なく蔵ノ介さんは部活で汗を流している訳で。

私はそんな蔵ノ介さんの所にお祝いしに行って、ビックリさせようと言う事で、こっそりと大阪にやってきたのだ。


春休みに蔵ノ介さんと逢ったから、1ヶ月ぶりの再会になる。

蔵ノ介さん、ビックリするかな?
喜んでくれるかな?
迷惑じゃないかな?


しばらく校門の前で固まっていると、後ろからとある人の声がした。
それは今日、私がここに来ると唯一知っている人物で。


『財前くん、久しぶり』

「うーわ、ほんまに来るとか。きも」

『なによう、元はといえば財前くんが“部長の誕生日に内緒で逢いにいけば?”とか言い出したんじゃない』

「あんなん、どう考えてもノリで言っただけやん。それを真に受けるとか、どんだけ面倒臭いねん」

『いーの!私が会いたかっただけなんだから』


そう言うと財前くんは「あっそ。ほな行くで」と言いながら高校の敷地内に入って行った。
慌ててついていくと、次第にお目当てのテニスコートが見えはじめて。
それと比例するかの様に、私の心拍数は激増した。


わ、わわわ。
内緒で来るの、初めてだし。
テニス姿も見るの初めてだし。
あっ、誕生日ケーキは……うん、崩れてない!


…て、あれ??
何だか、人が……

テニスコートの側まで辿り着いた時、私は違和感を感じて歩みを止める。

『ねえ、財前くん。今日って何かの試合の日なの?凄い応援というか…ギャラリーが…』

そう。
ギャラリーという名の女子生徒軍団。
彼女らは黄色い声を出しながら、コート内を一生懸命応援していて。
そして全員、手に可愛らしいラッピング袋を持っている。

それを見た財前くんは、理由が分かったらしく、少し意地悪な表情で私の問いに答えた。


「…あぁ、別に試合とかちゃうくて、普通の練習なんやと思うけど、今日は特別なんちゃう?」

『特…別?』

「おん。目的はお前と一緒や」

そう言って財前くんは、私か手に持っている手作りのケーキを指さした。
と、同時に嫌な予感が胸を軋ませる。


『ま、まさか…』

「おん、今日は部長の誕生日やしな。今年も女供がぎょうさん押し掛けてプレゼントを押し付けて来てるんやろな。ま、恒例行事や」

『こ、恒例行事!?』

「ついでに告白もようされるんとちゃう?」

『こ、告白!?』


そんな財前くんの言葉に、顔を真っ青になってしまう。
だ、だって…これが恒例行事って…告白って……
知ってはいたけど私の彼氏は、予想以上にモテるらしい。

だって、その証拠に…


「ホレ、見てみ」

『……っ、』


財前くんが顎で示した方を見てみると、練習が終わって休憩の為にコートから出てきた蔵ノ介さんに、沢山の女の人が押し掛けていて。

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