最果てに - 1


「奏、起きてる?昨日は大丈夫だっ……、た?」

「…自分ら何してるん?」



サバイバル生活2日目。
昨日の夜、突然倒れてしまった私を心配して、怜と財前くんが私の部屋に入ってきた。

相当心配してくれてたらしい。
怜に至っては、昨日白石さんと一緒に、ずっと看病をしてくれていたみたい。

そんな、彼らの目の前に映った光景。

それは、私が白石さんに土下座をしている光景だった。


* * * * * * *


「そんな謝らんでもええよ」

昨日の夜。
突然倒れて皆に迷惑をかけるという大失態を犯してしまった私。

それでも飽きたらず、夜遅くに目が覚めたかと思いきや、散々泣き喚いた挙げ句、白石さんの服の裾をぎゅっと握ったまま寝てしまったらしくて。


そんな白石さんは自分の部屋に戻る事も出来ず、結局そのまま一緒にいてくれたらしい。

私が朝起きた時、白石さんは座ったままの状態で寝ていて、そんな彼の服の裾をがっしりと掴んでいる自分の手を見た瞬間、血の気が引いたのだった。

そんなこんなで、今に至る訳だけど。

「謝らなくて良い」と言ってくれている白石さんの顔が、若干引きつっているのは気のせいではない。

この上ない迷惑をかけてしまった自分が憎い。

そんな状況を知った財前くんは、半眼になって「オレやなくて良かったわ」と言ってて。
…うぅ、返すコトバもございません。。


『本当に本当にすみませんでした。白石さんだって疲れてるのに、あんな風に捕獲してしまって』

「いや、捕獲て…」

『もう、金輪際ご迷惑をおかけしません…だから』


だから…、何だ?
“嫌いにならないで下さい”?
何考えてるんだ、私。
これじゃまるで…

『き、今日も…宜しくお願いしま、す』

そう言うと、白石さんはふんわりと笑って「もちろんや」と言ってくれた。

だ、だめだ。
昨日の夜から、白石さんを意識しすぎてしまう。

カッコ良くて、優しくて、頼りになる先輩。
私の中で、どんどん存在が大きくなっていくのが分かる。

好きになっても、仕方ないのに。
無駄な、事なのに。

でもせめて今だけは、このサバイバル生活の間だけは傍に居たい、と強く思ってしまったのだった。

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