ちょっと切ないちゅーの味 ー 1


「ゲームセット ウォンバイ四天宝寺 白石!6ー0!!」

ワァっ!!

『う…うそぉ……』


全国大会2日目。
我が四天宝寺高校は、ストレート勝ちで2回戦を突破。
中でも蔵が出たシングルス3の試合は、1ポイントも許さない完全試合で圧勝し、見る者の度肝を抜かせたのであった。

(ま…まさかとは思うけど……)

(……ご褒美のちゅー効果??)


cace.16 ちょっと切ないちゅーの味

《白石視点》

『これはこれは我が殿、蔵ノ介様。先ほどの試合お疲れ様でした。拝見させて頂きましたが、お見事な試合運びで___』

「ちょ、ちょお千郷?……何してんねん。。」



全国大会の2試合目が終わった。
相手は前回ベスト8まで勝ち残った強豪校やったけど、蓋を開けてみればストレート勝ちで難なく2回戦突破を決めた。
少し手こずってもうた昨日の試合とは一転して、俺は自分でもビックリするくらい絶好調で。

理由なんて1つしかあらへん。
単純な理由や。
千郷がいてくれた。
それだけやなくて、彼女として側にいてくれた。
それだけで俺の中で力が漲って、こうして勝ちを手にする事が出来たんや。

まぁ相変わらず財前と仲良くて、何や今朝も深刻な顔つきで話しとって内心焦りと嫉妬が沸き起こってもうたけど、それでも何とか堪えて平常を保つ事が出来た。

財前の事は大丈夫や。
千郷はちゃんと俺を想って財前の告白を断ってくれたんや。
せやから財前は千郷にとってただの仲良い弟分で後輩で、それ以上でも以下でもない。
せやから……大丈夫。。

しかし勝ったっちゅー事は、さっき千郷とした約束が実行されるって訳で。

「………あかん。ちゅーしたい言うてた時の千郷…むっちゃ可愛かったわ」


そんな風に呟いた時やった。
ふと見ると、会場の広場の一角に愛しい彼女の、何や怪しい姿を捉えてしもたんや。

芝生になっとる広場の木陰の下にひかれている場違いの赤い絨毯。
その上で正座して筆ペンを握り、何やら文字をしたためている様子の怪しい彼女。
ちなみにその斜め左後ろに樺地くんが和傘を持って千郷の上にさしている。


アカン。怪しい。
むっちゃ浮いとる。
しかも他校の連中が奇異な目で見とる。

せやけどスルーする訳にもいかなくって、千郷に声をかけて、そこでやっと冒頭に戻るんやけど…。

「ほんで、千郷は一体何を」

『おぉ、これは失礼しました。わたくしは今、写経をしている最中でして』

「は?写経?」

あまりにもアホな回答が返ってきたモンやから、つられて俺も素っ頓狂な声をだしてしもた。
何でなんやろう。
このこの奇異な行動の理由を聞かない方が良い様な気が激しくしとるんやけど。

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