ご褒美はなあに? ― 1
────昔、とある歌手がこんな歌を歌ってました。
“好きな男の腕の中でも 違う男の 夢を見る”
えぇ、○ュディ・オングさんです。
そしてこの歌詞はあの名曲です。
『まさか…この私が、○ュディ・オング状態になるとは…』
ちなみに別に本当に蔵の腕の中で、光の夢を見てた訳じゃありませんので、あしからず。
ただ、大好きな蔵との念願のちゅーをするかしないかっていう時に!
あろうことか、別の人とのちゅーを思い出してしまって、無意識に蔵を拒んでしまったのです。
まさかの展開に昨夜、一睡も出来ず。
これから私達はどうなってしまうのでしょう───?
cace.15 ご褒美はなあに?
『おっはよーゴザイマスっ!!』
全国大会会場の、とある広場にて。
朝のミーティングを終えた四天宝寺テニス部に向かって元気よく朝の挨拶をする。
「あ、おはようございます、千郷さん」
「今日も元気っすね」
そんな私の挨拶に次々と返事を返してくれる部員達。
そう。実はわたくし、蔵や小春ちゃん達だけじゃなくて他の部員とも仲良くなっちゃったんだよね。
そこで思ったのは、本当にテニス部員は個性豊か。
けど、みんな凄くすごく良い人。
蔵が引っ張っていってる部活だもん、当たり前だよね…なんて、ちょっとノロけてみたりもして。
そんな風にしみじみと思ってた時だった。
「おはようさん、千郷。今日も朝から元気やな」
『……っ、』
ぽん、と後ろから肩を叩いて来たのはマイスイートハニー・蔵。昨日の甘い展開を思い出して一瞬で赤面するも、すぐその後のちゅー拒否事件を思い出して、またまた一瞬で顔が青くなる。
そんな私の心情を察してくれたのか、蔵がふんわり笑って後を続けた。
「ははっ、赤くなったり青くなったり忙しいやっちゃな」
『あ、あのっ!蔵!昨日はごめんねっ!ちょっと…ビックリしちゃってて…っ、だけど私っ、』
「はい、ストップ」
『ふがっ!』
とりあえず謝ろうと口を開くも、あっさりと蔵の手によって塞がれた。そんな些細な触れあいだけで直ぐに胸が跳ねてしまう。
これだけで、こんなにドキドキするんだから、ちゅーなんかしたら私きっと心臓爆発して吐血するかもしれない。
そんな事を想像しながら、今度は再び赤くなっている私に蔵は笑って後を続けた。
「昨日はビックリさせて堪忍な。ものっそい恥ずかしい話やけど…久々に千郷と会えて…しかも恋人同士になれて、すっかり舞い上がってしもたみたいや」
『う、ううん!私こそゴメンっ!全然嫌じゃなかったし、むしろ凄く嬉しかったのに、急で…その、ビックリしちゃって』
まさか光との事をいえる訳なくて、謝罪の言葉も尻すぼみに小さくなっていく。
「ええんや、俺たち始まったばっかやん。急がないで、じっくり行こう、な?」
『………ちゅー、しないの?』
「何や千郷、俺とちゅーしたいん?」
『…………(コクン)』
「っっっっっ///!!」
やば、つい本音が出ちゃった。
だって昨日の事すっごい後悔したんだもん。
それに蔵を傷付けちゃったかもしれないし、それが怖かったんだもん。早くやり直したかったんだもん。
見ると、蔵はそんな私のアクションにビックリしたのか赤くなって目を見開いていた。
あれ?もしかして、引かれて……る??
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