仕切り直しの甘い夜―1


『く、蔵。お待たせ。ごめんね眠かっ――!?』

夏休みの真っ只中。
時刻は深夜1時40分を回っている。

かなり遅いお風呂をいただいてから、鷹見家の一室に入った途端、私は気絶しそうになった。

「おかえり、千郷。いや、俺も今ちょうど風呂から上がった所やから大丈夫やで」

部屋の中では、キングサイズのベッドに腰掛けているバスローブ姿の蔵が待っていたのである。

『ばばばばバスローブ姿!』


The☆妖艶。

これ以外の言葉で果たして形容出来るだろうか。
あまりにも妖艶で似合いすぎてカッコ良すぎて、直視出来なくて思わず掌で顔を覆う。

「ちょお、なして顔を隠すん?」

『だだだだだって!蔵のバスローブ姿がほんとドキドキしてっ!!だめっ!むりっ!!』

「なーに言うてるん。自分やってバスローブ姿で、むっちゃ誘ってくるクセに」

そう言って蔵はベッドから立ち上がり、ゆっくりとこちらへと向かってくる。

『ぎゃあ!誘ってないし、ここここ来ないで!!』

にじりにじりと詰め寄られ、後退するもすぐ後ろは部屋のドアで逃げ道がなくて。

「却下。まず隠してる顔を見せてな?」

そう言って、私の顔を隠している両手を優しくて掴んで、そっと顔から離す。

『………ぁ』

瞬間、目と目が合って、とんでもなく恥ずかしくて、みるみるうちに顔が赤くなるのを感じて。


「………アカン。千郷想像以上に可愛ぇ」

私の顔を見て、照れたように言う蔵に対して、ますます顔が赤くなってしまうのだった。


(一体、どんな夜になるの??)

cace.19 仕切り直しの甘い夜


『…………』

「…………」

カチカチと時計の音だけが、部屋中に鳴り響く。
この部屋で音を発している物はただ1つ、大層立派な時計だけだ。

私と蔵はと言うと、気まずそうにキングサイズのベッドに隣り合わせに腰を掛けていた。
沈黙が重くて、ただただ時間だけが過ぎ去っていく。

そんな沈黙を破る様に、蔵が言葉を発した。



「……あんな、千郷」

『ぎゃあ!!』

「そんな驚かんでも。そろそろ泣くで?」

『ご、ごめん』

気まずい雰囲気の中、突然声をかけられてビクッと反応してしまい、そんな私の態度が蔵の心を抉ってしまって。
困った様な泣きそうな顔をした蔵を見て、ズキンと胸が痛くなった。


(そ、そうだ――、私は蔵を悲しませたいんじゃない。せっかくタカビーと景吾が仲直りの場をセッティングしてくれたのに、それを台無しになんて出来ない)

1つ決意をして、すーはーと深呼吸してから愛しい人の名前を呼ぶ。

『く、蔵。あの…先に言って良い?』

「おん」

『もう一回私の気持ちを言わせて』

「……っ、」


そもそも、こうなったのは私が光とキスをしてしまった事から始まった訳で。
ぐるぐると私の小さい頭で色々と考えすぎて、蔵のキスを拒んだ私に問題があって。

でも、私の気持ちは始めからシンプルだった。

『私、蔵が好き。蔵だけが大好き』

身体を蔵に向けながら、真剣な瞳で訴えかける。

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