王子様の登場ー1
『でね!聞いてよタカビー!そしたらさぁ、その後蔵が何て言ったと思う!?』
「知りませんわそんなこと!もう今何時だと思ってるんですの!?12時回ってますわ、いい加減に寝ないといけなくってよ!」
『いいじゃん、せっかくの女子会なんだしぃ』
「わたくしはそんな催しを開催した覚えはありませんわ!」
『そんな事言わないでよタカビィ〜うぅ、うっ、うっ』
「ちょっ!どうしてそこで泣くんですの?あぁぁぁぁもう分かったから、ここで何でも愚痴なり何なり吐き出しなさい!」
『う゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛』
「本当に吐いてどうするんですのぉぉぉぉ!!!」
タカビーの悲鳴が閑静な高級住宅街の夜空に響いた、そんな夜。
cace.18 王子様の登場
RRRRRRR
突然の電話の着信音にビクッと反応する。
『………蔵、』
見ると着信の主は紛れもなく蔵で、私は反射的に身体がこわばる。
そんな私を見てタカビーがじれったそうに声をかけた。
「………電話、出なくて良いんですの?あなたの殿方じゃないんですの?」
『…うん。でも、何を話したら良いか…』
なおも躊躇している私に、タカビーが更に続ける。
「ついこの間、携帯の返事を無視して喧嘩したって言ってたじゃない。また同じ事の繰り返しするの?全く誠意がないと思わないんですの?」
それでも躊躇する私に痺れを切らしたタカビーは、今なお鳴り続ける携帯を私から引ったくり、何とピッと通話ボタンを押したのだ。
『!?ちょっ、何して―…』
「もしもし?生憎ですが、大垣さんなら今は出られなくってよ。彼女の身柄は、この私が預かっていますわ。大事にしたくなかったら、しばらくは連絡してこないでくださいます?それではごきげんよう」
『ちょっとぉぉぉぉぉ!?』
タカビーは、そう言うや否や颯爽と通話オフのボタンを押してしまったのだ。
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛。
もう終わりだ、絶対に不審に思われた!
何かやべー連中とやべー事になってるって思われたに違いないわ!
あいつの交友関係どないなってんねん、やっぱ付き合うのやめとこって思われたわ絶対!!
『というか、タカビーあの言い回し微妙過ぎない!?誤解を招きますよ!?騒ぎになったらどうすんのさ!』
「それよりも見てごらんなさい。さっきまでの間に着信が結構来てたらしいですわ」
本当だ。
蔵からの着信が沢山…
きゅっと胸が張り裂けそうになる。
あんな別れ方をして、蔵の方にも何か思う所があったのだろうか。
優しい蔵の事だ、もしかしたら謝ろうと思って電話をくれたのかもしれない。
そんな風に干渉に浸りながら着信履歴を眺める…と、ある名前の所で手が止まった。
『んん??景吾?と、亮。と、長太郎くん?』
景吾ならいざ知らず、あとの2人からの着信は意外なもので。
ううん?と首をひねって着信履歴画面に目を落とす。
と、その時だった。
再び私の携帯に着信があった。
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