不二くん台風!- 1
「はい、じゃーこのグラフの直線を式で表すと…仁王、答えは何だ?」
「プリッ」
「ん!正解。答えはy=x+2だな。はい、じゃ、次いくぞー」
『うそぉ!?』
act.4 不二くん台風!
「桜おつかれー、さっき授業ん時の桜のツッコミ、めっちゃ面白かったよ(笑)」
『もう!めっちゃ恥ずかしかったんだから、やめてよーっ//』
「桜チャン、可愛かったナリ」
『う、うるさい張本人っ!!』
5限目の数学の時間。
私は仁王くんと先生とのやりとりに、つい盛大なツッコミを入れてしまったことにより、クラス中からクスクスと笑われる羽目になってしまったのだ。
恥ずかしい事この上ない。
ていうか、何で皆は平気なんだ?
いてもたってもいられず、キッと仁王くんを睨む。
だけどもちろん、仁王くんは全く動じていないらしい。
「ほぅ、そうやて睨む桜チャンも、なかなか、そそるぜよ」
そんなコトを言いながら、よしよしと私の頭を撫でてくる。
一瞬、クラスの女子が殺気立ったのを感じて、慌ててその手を振り払った。
「仁王、馴れ馴れしく桜のコト触ったりしないでよね」
『そ、そーだそーだ!』
「相変わらず、冷たい姫さん達じゃ」
「仁王、なーに凹んでんだよぃ」
『あ…』
「おう、丸井」
突然の丸井くんの登場に、一瞬、戸惑ってしまった。
それは数日前、萌から丸井くんと付き合っていたことを聞いたからであって。
ちらりと萌と丸井くんを交互に盗み見てみるけど、2人は完全に何事もなかったかの様に自然に仲良く話をしている。
それが不思議でたまらなかった。
(別れた2人って、もっとギクシャクするのかと思ってた…けど、そうでもないのかな)
確かに、この2人ならアリかもしれない。
お互い、さっぱりと切り替えて引きずらないタイプな感じだもん。
(私…も…。いつか、こーちゃんと、こうして普通に喋れる日がくるのかなぁ。)
そう考えると、無条件に心が痛くなる。
「七瀬?おい?」
(過去の人って割り切れる日がくるのかな…そんな日がくるのも、嫌かも)
「七瀬ってばよぃ!」
『っへ?』
「なに、ボーッとしてんだよぃ」
ぼーっと色々考え込んでいる私に丸井くんが呼びかけてくれていたのに全然気づいてなくて、ハッとする。
『う、ううん。何でもない。それより、今日は部活ないの?珍しいね』
「おぅ、来週は実力テストがあるからな。今日からテスト休みなんだ。
よーっし!ジャッカル誘って、駅前のパフェでも喰いに行くかなっ」
そう言って丸井くんは携帯を取り出すと、カシカシとメールを打ち出した。
多分、そのジャッカルくんとやら(名前?あだな?)を呼び出すだろうけど。
(…テスト休みの意味ないんじゃ…)
そう思ったけど、あえて口に出しては言わなかった。
と、その時だった。
廊下の方がやけに騒がしい。
どうやら女子生徒たちが、ざわざわ騒いでるようだけども。
「ん?なんじゃ、うるさいのぅ」
しかもその音は、どんどん大きく、そして近くなっていく。
きゃーっ!
…何となく、黄色い悲鳴に聞こえるような気がするけど。
「ったく、静かにできねーのかよぃ」
とうとう、ひっきりなしに聞こえるざわめきは、私たちの教室の前までやってきて、そして止まった。
ガラッ
「七瀬、居るか?」
教室に入ってきたのは柳くん。
しかも、私をご指名デスか??
『へ?わ、私?…何の用でしょう?』
柳くんの突然の登場と、その突然の呼び出しに戸惑っていると、構わずに、柳くんがこちらの方へやってきた。
「ほう、柳。どうしたんじゃ」
「七瀬に何か用か?」
仁王君と丸井君も、柳君と私という珍しい組み合わせに興味津々のようだった。
「七瀬、お前に客が来ている」
『お客さん?』
どうやら、私にようがあったのは、柳君じゃなかったみたい。
でも、それじゃあ誰が?
こてんと首を傾げていると、柳君が教室の外の方へと声をかける。
「入っていいぞ」
とう言った瞬間。一拍おいて、とある人物が教室の中に入ってきた。
『あっ!』
「「………??」」
中に入って来たのは、不二周助くん。
東京の青学テニス部レギュラーで、私とこーちゃんの幼なじみだったんだ。
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