初デート ー 1


「なぁ。俺らってデート全然してなくね?」

『へ?』

それは突然のブン太くんの一言から始まった。


あの告白の日から1ヶ月半。
季節は、もう少しでジメジメとした梅雨とはオサラバして暑い夏がやってくる頃。

───そう。
熱い戦いが幕を開ける季節となる。

今回の関東大会の決勝は幸村くんの手術日でもあって、それは私たちにとって、とてもとても大事な日であって。

何がなんでも、関東大会優勝のトロフィーを手に幸村くんに届けなきゃいけないんだ。
そう言って、より一層練習に力を入れた矢先の出来事だった。

「デートしようぜ☆」

『え??…………でぇと?』


まさかのブン太くんからのデートのお誘い。
甘くて、ドキドキする時間の始まりです。


act.20 初デート


『ぶ、ブン太くんっ!お待たせっ!!』

「…………おう。」


私達は15:00に、横浜の桜木町で少し遅い待ち合わせをした。何でかと言うと、それはズバリテスト期間だから(泣)!!
午前は真面目に家でテスト勉強→夕方からデートという、まさかのスケジュール。


基本、立海テニス部の練習は休みが少ない。
それは関東大会を目前に控えているから尚更だ。
雨の多い梅雨の時期だって、屋内設備バッチリの立海にとっては何の問題もなく練習に励める訳で、つまりデートする暇が一ミリもなかった。

そんな訳で、半分諦めかけていた休日デート。
まさかこんな形で(無理やり)決行するだなんて思ってもみなかったから、驚きはしたけどやっぱりとても嬉しい。

普段は無造作に結ってある髪をおだんごに纏めて、薄いエメラルドグリーンのワンピースに白いボレロを羽織る。さらに前に従姉妹のお姉さんから貰ったコロンをつけて、それなりに気合い入れてお洒落してきた訳だけど。


(……あれ?ブン太くん、何か機嫌わるい?)


何となくそっけない態度のブン太くん。
もしかして、結構待たせてた?
約束の時間より早めに来たハズなんだけど…

不安になってチラッとブン太くんを見上げると、それに気付いたブン太くんが「バカ、あんまこっち見んな」って顔をそむけちゃって。

いよいよ不安に駆られていると、そんな私を見たブン太くんが「あー、悪い」と言いながら一言。


「今日の桜……すっげー可愛い」

『……………っ!!』


それは正に不意打ちのストレート。

顔を真っ赤にして言葉を失っている私の手を繋ぎながら「じゃ、いこーぜ」というブン太くんもまた、顔を紅く染めていて。


(や…やばい)

(まじ、やべぇ…)


((今日、心臓もたないかもしれない……))

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