大好き ー 1
かつて、これ程までに心臓がドキドキいった事があっただろうか。
『……………』
「……………」
もうヤバい、完全にバレてる。
だってもう言っちゃった様なものだもん。
ブン太君が好きだって。
あれ、でももう1度ちゃんとハッキリと言わないと駄目だよね。
だってそうじゃないとブン太君、返事出し辛いよね。
断りにくくなっちゃう。
そう言えば考えてみたら私、告白するの初めてかも。
どうしよう。
ちゃんと上手く伝えられるかな。
『あ、あの……』
沈黙が重くてどうしようもなくて、とりあえず声を絞り出した時だった。
〜♪ 〜〜♪♪
『えっ!!』
突如、鳴り出す予鈴。
「午後、サボりだかんな」
『えぇっ!?』
そしてまさかの延長戦突入宣言。
(に…逃げ場がない……)
act.19 大好き
「ん…やる」
『ど、どうも』
校庭では目立つという事で、本鈴前に部室へと移動した私達。
そこには既に萌と雅治くんの姿はなくて、聞くとブン太君が既にメールで教室に戻らない事を連絡してくれたとの事。
部室のベンチに座ってたった今ブン太君がくれたグレープジュースを半分自棄になって、ぐいっと飲み干した時だった。
今度はブン太くんから、口を開いた。
「あの…よ。一個聞いて良いか?」
『は…はい』
「あー、前に言ってた…テニス部ともう付き合うつもりはねーってヤツ。たくさんだとか、うんざりだとか言ってたじゃん」
あ、そう言えばそんな事言ったかも。
六角との練習試合の時だ。
ブン太君の気持ちを勘違いして、それで私は自分の気持ちに蓋をしようとして。
『あ……あはは。そんな事言ったねぇ。何か凄い恥ずかしい。誰も私とは付き合おうとしないってーみたいな』
完全に顔を引きつらせながら、精一杯の作り笑いをする。
あぁ、早くこの場から抜け出したい。
早く気持ちを伝えて、この場から逃げ去りたいです。
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