僕は君の名前をまだ知らないー1


「な…何やったんや。今の」

目の前の…道路を挟んで向こう側で繰り広げられる光景。
突然の雨に降られて傘がないという妹の友香里を迎えに、一時的に避難しているというコンビニに傘を持って向かっていった所だった。

目的地が視界に入り、妹の姿が何処かに見えないか目を走らせた所に、突如として視界に入った光景。
―それは紛れもなく一色触発の光景やった。

「…っ、友香里!?」

1人のか細い体形の男子が呻くように道路に座り込み、その男子を介抱するかの様に肩に手を回している女子がおって、その女子は紛れもなく妹の友香里やった。

そんな2人の前を守る様に立っている1人のポニーテールの少女と、彼女に対峙するように立ちはだかっているのは、3人の男子…中学生か?3人とも全員揃いも揃ってガラが悪い。
どちらにせよ、不穏な雰囲気なのは間違いなかった。


「っ、アカン」

急いで走り出すも、ガードレールにきっちり阻まれている道のため、突っ切って道を渡る事も出来ず、ビシャビシャと雨で溜まった水たまりが跳ねるのも気にせず、そばにある横断歩道へと走る。

焦る気持ちを胸に、赤信号を待ちながら現場をチラリと見た瞬間、対峙していた男子の中の一人が、少女に向かって手を上げようとした所やった。

「まずい」と思ってつい、赤信号を渡ってしまおうかと身を乗り出した時、ありえない光景に思わず足を止めた。

少女は、殴りかかってくる男子の腕をいとも簡単に薙ぎ払い、間髪入れずに腕をひっつかみ一本背負いをかます。
と、同時にまた襲い掛かってきた男子のパンチを、なんと宙返りで避け、後ろに回った所を腕を捻り上げて無効化させた。

そして、少女は最後の一人を一瞥し、彼らに向かって何か言葉を投げた。
その後、3人組の男子は紙切れ――お金か??を何枚か投げ捨てて、慌てて何処かに去って行ったんや。


―いつの間にか、信号は青に変わってて、それに気付いた俺は慌てて横断歩道を渡る。
信号を渡り切った所は例の現場がほんの数秒だけ死角になる。
しかし、そのまま死角を突っ切り、道なりの奥まった所にあるコンビニが見えてきた時やった。

「……、は??」

「あ、くーちゃん」

そこには、先ほど見かけたポニーテールの少女は何処にもいなくなっとって、代わりに投げられた札束を財布にしまう細い体形の男子生徒と、それを気遣うように背中を叩いている友香里の姿があったんや――…

(一体、あの子は誰…?)


action.1
僕は君の名前をまだ知らない



あれは、まだ桜がギリギリ咲いていた、春休み後半の出来事やった。

「白石?聞いとるん?」

「んー」

あれから10日近く経つけど、あの子の姿を未だに一度も見たことはない。

「今日白石の誕生日やんな?これな、新しく発売された青汁やねん。むっちゃ美味いしな、添加物も全然入ってへんねん。ぎょーさん買うたから、白石にも一箱あげるっちゅー話…」

「ん−」

「……1たす1は??」

「2」

「ちゃんと聞いとったんかいっ!ほならちゃんと返事せぇや!!」
 
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