君の居場所を知りたい―1


action.3
君の居場所を知りたい



「なぁ白石。そういや例のスーパー少女は見つかったん?」


それは憂鬱な雨が振り続ける6月の中旬の事だった。
雨でコートが使えない為、屋内で筋トレのメニューをこなしている最中、思い出した様に謙也が言った。

一瞬何の事か分からず、目をぱちくりしていた白石だったが、すぐに思い当たり苦笑いしながら答えた。

「いいや、全然。まったくもって、何の手がかりもナシや」


実の所、この話をするのは久方ぶりである。
と言うのも、白石は意図的にこの話題を避けていたからだ。
謙也とこの話題をすればする程、いまだに少女を見つけられない事への訳の分からないな焦燥感が募っていくからだ。

かと言って、白石の頭から彼女の事がすっぽりと抜け落ちる事はなかった。
授業中や部活中、風呂に入ってる時や読書をしている時など、ふとした瞬間に彼女の事を思いだし、思いを馳せる事が度々あったのだ。

(別に探し当てた所で、どうなる訳でもないのにな)

彼女と知り合って、どうなりたいとかではない。
ただ強烈に印象に残っていて、強烈に興味をそそられただけだ。
彼女への気持ちはそれ以上でもそれ以下でもない。

そんな風に思いにふけっている時に、財前が声をかけた。


「先輩ら、スーパー少女って何の話スか?」

「おお財前。あんな、白石が探しとる女の子がおってな。なんや、ごっつ強くて不思議な女の子らしいんやけど」

「はぁ?ゴリラ女かなんか探してはるんですか」

「あほ、んな訳あるかい」

白石はため息をつきながら事の顛末をかいつまんで財前に話した。予想通り、話が進むにつれて財前の顔が怪訝な顔つきへと変わっていく。


「なぁ、財前も知らん?標準語でポニーテールの女の子」

「さぁ…クラスに標準語でスーパー戦隊が好きな変な女ならいますけど」

「なんやそれ」

「謙也さんも知ってるでしょ。佐々木ってやつ。放送部員て事でよく担任にこき使われてるやつです」

「あぁ、エマちゃんの事かい!そういやあの娘も標準語やったっけ」

財前の説明を聞いて、ポンッと拳を打って謙也が納得の表情を見せる。
唯一、接点のない白石はポカンとしていたが「ほら、前に銀に弟子入りをしようとした子やで」と聞いてやっと理解した。
とは言え、前に一度銀に弟子入りをお願いしに来た時に一度見たきり、そしてたまに謙也との会話の中で「放送委員の後輩で、こんな子がおる」といった形でチラッと聞いた事がある程度で、そこまで印象に残っていない。
顔すらも朧気でしか覚えておらず、もしもう一度見たとしても、言われなければ気付かない程度である。

「この年代でスーパー戦隊が好きって珍しいな」

「なんや前にリュウグウジャーとかいうやつに出てた如月拓海とかいう俳優がむっちゃ好きらしいですわ。せやから、俳優が好きなんであって、戦隊モノが好きなのとはちょっと違うかもしれませんけど」

「ふーん、言われればそうやな」

「しかもアイツが不良をおっぱらったなんて、全然想像つきませんわ。無類のおっちょこちょいですよ、アイツ」

「ははっ、逆に気になる人材や」

そう談笑して、いつのまにか話題は別のものへと変わっていった。
もしかしたらコレも白石がわざとスーパー少女の話を打ち切ったのかもしれない。
もしかしたら白石は、スーパー少女の事を探すのをもう諦めたのかもしれない。

しかし、財前の心の中は妙に引っ掛かっていた。


(ポニーテールの少女、標準語、そして)

(不良を撃退した、スーパー少女……)

この時財前の頭に、ある1つの可能性が浮き出た。
しかし「まさか」と思いすぐにかぶりを振る。
あんなアホがそんな大それた真似が出来るはずがない、そう思ったからだ。

この時、白石たちは限りなく「ポニーテールのスーパー少女」の正体へと近付いていたものの、あと一歩の所で掴み損ねてしまったのである。
 
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