史上最速の失恋 ― 1


あの、すみません。

俺が拾った携帯の持ち主は

携帯を落とした者なんですけど

俺がこんなにも焦がれて止まないキミのものやった。
これが俺とキミとの本当の出逢い。

その瞬間俺は、
運命っちゅーモンを信じてもうたんや。


二束目
史上最速の失恋



『わざわざ預かって下さって本当にありがとうございます。凄く助かりました』


そう言ってぺこりと頭を下げる彼女の名前は瀧本 琴音ちゃん。
今年入学してきたばっかの1年生との事やった。

あぁぁアカン。
ほんま可愛え、直視出来んくらい可愛え。
たぶん今、俺の顔は耳まで赤くなってんのとちゃう?

あーやばい。どんだけヘタレなん、俺。
何か言わなアカンのに、心臓が爆速で鳴っているからか、上手く声が出えへん。
心臓まで浪速のスピードスターにならんでええっちゅー話や。

そんな中、「あ…」とか「う」とかモゴモゴ言う俺を見かねて白石が助け船を出してくれた。
ナイスや白石。今度俺のオススメ青汁を奢ったるわ。だから色々と助けて下さいお願いします。

「ほれ、瀧本さんの携帯。これな、教室に置いてあったのをコイツが見つけたんや。な?謙也」

そう言って白石が俺に話を振った時。
瀧本さんが「あ。」と小さく声を出した。

『もしかして、先週の……?』

「お…おん。この前は、その…落とし物拾ってくれておおきに」

やっとの事で声を振り絞り、笑顔を向ける。
やって、嬉しかったんや。
先週の事を…瀧本さんにとって小さな出来事やったハズなのに、それを覚えてくれた事。
それが嬉しくて、自然と笑顔が零れた。
……まぁ、しまりのない、だらしない顔っちゅーのは敢えて伏せておくけどな。

ちなみに当の本人は俺のだらしない表情には気付いておらんかったらしい。『そんな偶然なんてあるものなんですね』と可愛らしく笑った。
…と、アカン。可愛すぎて忘れる所やった。
自己紹介せな。

何事にも出だしが肝心や。
スマートに自己紹介して少しでも好感度をあげるんや。


頑張れ、俺。
ビバ・青春や!!!

「あの俺、医学部の忍足謙也言うねん。でもってコイツが親友の…―――」

『はい、知ってます。白石蔵ノ介さん…ですよね?』

「「………は?」」


まさかの台詞に目が点になる。
な、なななな何て言った?今。
何でこの子が白石の事知ってるん?
まさかの知り合い…―?って白石までぽかーんとしてるやないかい!

もしかして…やけど。
白石はこの大学で有名や。
白馬の王子様って言われてるんや。
入学したての瀧本さんらが知ってても不思議やあらへん。
あぁぁ、既に瀧本さんが白石に恋しとったらどないすんねーん!

焦燥感と嫉妬が変な風に入り混じって何も言う事が出来んくて。
やけどこの次に瀧本さんの口から出た言葉が更に俺を混乱へと招いた。


『あ、すみません。何で知っているかっていうと、良く聞くんです、白石さんのこと。彼が、白石さんのこと凄く気にしてる風だったので』


―――…は??

い、今…何て言って…。
ごくりと生唾を呑んでから、恐る恐る確認する。
俺の聞き間違いやなかったら、瀧本さんには既に…

「彼って、いうんは…彼氏さんの…こと、やんな?」

瞬間。一気に顔を赤らめてはにかむ彼女を見て“あかん”と、思った。
この表情を、俺は良く知っている。

相手が好きで好きでたまらないっちゅー純粋な愛。

俺の初めての一目惚れは、一週間っちゅー史上最速の記録を打ち立てながら見事に失恋をしたのやった。
 
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